何もしてないのに俺が壊れた
……惨敗だった。
脚力以外の能力オール「0」って奇跡だろ、寧ろドッキリか何かじゃねーの?
横から看板持った男とか出てきてウッソデースとか言ってくれ、早く。
「決まりましたね、おめでとうございます♪」
カツーンカツーンとヒールの音が鳴り、どこで反射しているのか知らないが残響音まで聞こえてきた。
霧がふわりと揺れ、声より少し遅れてルビィが再び現れる。
「最初にその出方やっとけよ!」
「わかりました、次の方の際にはそう致します♪」
次のやつ俺に感謝しろ。
「では最後です。新たな地での名前はどのように致しましょう♪」
「ス〇レイ〇・〇ー〇ー」
「多中林 五郎様ですね♪それでは五郎様の新たな人生に祝福を……」
「おいなんで五郎なんだよ! 俺現世でも五人兄弟とかじゃなかったぞ! あと名字のこれ誤変換じゃないのか!」
話はそのまま無視されて、直ぐに暗闇が俺を包んだ。
◇ ◇ ◇
光が急に戻って、眩しさに目を窄める。
数秒、まるで目の前に世界が出来上がっていくみたいな感覚に陥った。
……俺は、村の小道らしき場所に立っていた。
「あー、ここは多分最初の村なんだろうな」
地面を見る、空を見る、まさに感無量。
あえて言うなら記念すべき今日という日が、あいにくの曇り空ということぐらい。
体を確認する、如何にもといった感じの中世村人服。
「ちゃんと服着てる。……当たり前か」
……うん。
レベル0だけど、とりあえず生きてる。
まずは一安心ということで、とにかく散策だ。
辺りをキョロキョロ見回すと、チラホラと行き交う人々……人通りは少ない。
よしっ、まずは誰かに話しかけて情報を…だがしかしだ!
記念すべき第一声として、話しかける相手は必ず幼女だろう!
いや違うんだよ違う違う……違う違う違う。
いきなり他人に話しかけてなんだこいつって顔で見られたらさぁ、俺の豆腐メンタルがさぁ。
だからほら、あれだ。
とにかく町の広場を探そう、うん。
よし全然変じゃないぞ、全然変じゃないぞ俺。
「行くぞ!」
冒険は今ここに始まる!
グッと拳を握り締め、力強く一歩前に踏み出した。
そしたら俺は教会の中に居て、目の前には神父がいた。