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よわよわスキルで無双します!  作者: 栗尾りお
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第8話 嫌々草原を歩きます! その1

 「……ん」


 いつもと違う床の感触と異様な眩しさに目を覚ます。


 「あー、目が死ぬー」


 ここ数週間ほとんど日光を浴びる事なく生活していたため目を開ける事ができない。


 目を日光に鳴らす事数分、ようやく周りの景色がはっきり認識でき始めた。

 日の光を受けた鮮やかな緑色の芝生がどこまでも広がっている草原。近くには建物はどころか木も一切なく、遠くの方に山が見える程度だ。


 「ん?」


 手に何か当たったので目を向けると、カップラーメンの容器と箸が転がっていた。


 あの神、私にゴミを押し付けたな。なんとなく怪しいと思っていたけど、神とはいえど可愛くても所詮はクラスカーストの上にいる女子と何も変わらない。


 神に雑な扱いをされた怒りがこみあがり、グーで容器を叩いた。


 「ぬぁ!」


 しかし、容器は潰れる事なく、反対に私の手に大ダメージが来る。


 「あああ!」


 言葉にならない悲鳴をあげながら草原を転げ回る。まるで岩を本気で殴ったような感じだ。


 悶える事5分。ようやく痛みが引いてきた。


 いろいろ疲れた私は草原に寝そべって空を見上げた。


 まだ異世界転生らしい事は起きていないのに、ここに来るまで痛い思いしかしていない。私ひょっとして元の世界で知らないうちにとてつもない罪を犯していたのかな……


 心地いい芝生の感触と暖かい日差、様々な疲労のせいでにだんだん眠くなってき――


 『あー! あー! マイクテスト!』


 「うるっさ!」


 突如、頭の中に爆音が流れる。驚きのあまり文字通り飛び起きてしまった。


 『あははは!』


 試しに耳を塞ぐが、聞き覚えのある憎たらしい声が頭の中に響いている。これがテレパシーというやつかな。


 『あー、お腹痛い。どう? タイミング的には寝るか寝ないかのギリギリ狙ったんだけど、どう?』


 この神、本当に性格悪いな。


 「ええ、最高に最悪でしたよ。で、何のようですか?」


 『とくに用はないけどね。あ、そうだ。その世界いろいろモンスターが現れるから早く王国を目指したほうがいいらしいよ』


 マジか。下手したら転生して即モンスターに殺されておしまいっていうルートもあったみたいだ。


 「で、その王国はどこにあるんですか?」


 『えっとね……え、この子今どこにいるの……あ、ここか……これどうやって言えばいいの?』


 ロベリアは小声で誰かと相談を始めた。声ははっきりとは聞こえないがもう一人神がいるようだ。


 『まあ、いいや。今あなたがいるところから同じぐらいの距離に大きな王国が3つあるの。そこに行けば何とかなるよ』


 なるほど、どの王国に着くかは分からないがとりあえず行かなければ。


 「方角はどっちですか? あと、どれぐらい時間かかるか知りたいです」


 見渡しても草と山しか見えないこの状態ではどっちに歩いていけばいいか分からない。運が悪ければ王国がない道をひたすら歩くなんてこともあり得る。


 『そんなに時間はかからないよ。ほんの5、6時間あるけば着くし』


 は? 聞き間違えたのかな。5、6時間って聞こえた。嘘だよね! 嘘って言って!


 『方角は……私分かんなーい』


 「え? 待って。ここでふざけても面白くないですよ。ほら神様でしょ。ここは教えてくださいよ! ねえ!」


 『あー、電波悪いみたいだね。聞こえない。全然聞こえない。……あ……かっ……ふふっ』


 電波が悪い時の電話の真似をしているみたいだが、最後我慢できなくて普通に笑っている。これ絶対聞こえているでしょ。そもそもテレパシーに電波とかないでしょ。


 『あ、最後にラーメンの容器あると思うけど、破壊不能の魔法かけてるから。あと、どこかに捨てても私がテレポートであなたのところまで飛ばすから無駄だからね。じゃね』


 電波悪い設定を忘れた神は一方的に話しかけてテレパシーを解除したようだ。


 でも、さっき容器を殴っても潰れなかったの理由が分かった。

 つまり転生者の私よりゴミの方が強いというわけか。ゴミ以下と言われるよりこっちの方が精神的にくる。


 少しネガティブになりながらも私は王国に向かって移動を開始した。

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