第7話 めちゃめちゃな神に振り回されます! その2
そんな事があり今に至る。
「あーあ、今期のノルマはもう達成したか。アル、今日打ち上げしようよ」
なんて、呑気な事を言っている。
「先輩、前にも言いましたけど私たちの仕事はここからなんですよ! ちゃんとサポートしないと。あの子先輩が選んだ子じゃないですか!」
本来ならば適性者を探すのは私の仕事だ。けど、この先輩はいつも勝手に私の水晶で人を探し、勝手に呼び出す。そしていつも適当に転生させて、あとは放置する。
何事もきっちりしておきたい私とは馬が合わない。
「まあまあ。落ち着きなよ、アル。どうしたの? 体重でも増えてた?」
ふー、落ち着け。落ち着け、私。
目をつぶり頭の中でゆっくり3数える。……1……2……3。よし、落ち着いた。こんな事で怒っていたらキリがない。
「いえ、体重は変わってません」
「そっか。でもね、アル。私はあの子に嘘はついてないよ」
急に真面目な顔つきでこちらを向き話し始める。
「私は、容姿と転生先についてあの子に聞いたの。で、私はあの子が必死に考えた内容を聞いた」
その割には途中で話を遮ってたような――
「あの子がスキルの話をしだしたからだよ。私はどんなスキルがいいかは聞いていない。あの子が勝手に思い込んでいただけだし。スキルを決めるのは私たちでしょ」
私の心を読んだかのように先輩は答える。言われてみれば確かにそうだ。一言もスキルについては聞いていなかった。嘘は言っていない。
「でも先輩、あんなに注文の多い内容を叶えるには私たちがサポートしないと実現できないですよ」
「え? なんで?」
先輩は不思議そうな顔で私を見上げる。
「だって、かっこいい男性たちにお世話されていきたいみたいな内容言ってたじゃないですか」
「うん、そんなこと言ってたよ」
「でも、それってあの子1人じゃ無理ですよ」
「だろうね」
「じゃあ、サポートしないと」
「しないよ」
「でも願い聞いたじゃないですか」
「うん、私ちゃんと聞いたよ」
「…………」
まさか『聞いた』とは願いを叶えると言う意味じゃなくて文字通りの意味なのかな?
「……もしかして、聞いただけですか?」
「当たり前だよ。誰も叶えるとは言っていないし」
全く、この人は……もはや神と言うより詐欺師じゃん。
「ところで先輩、あの子にはスキルは与えましたか?」
異世界転生させる際に私たちはスキルを与える事ができる。
しかし、この先輩はスキルを与えないどころか自分自身の気に入らない体質を転生者になすりつける事がある。
最近あった一番ひどいのは、自分がすごいくせ毛だからといって転生者になすりつけたと言う話だ。そのおかげで先輩は今つやつやのストレート髪を手に入れたらしい。
でも、先輩は知らないが、なすりつけられた転生者は珍しい髪型だと崇められて幸せな生活を送っているらしい。しかし、そんなミラクルは稀にしか起きない。
「で、先輩。どうなんですか?」
「んー?」
得意げな顔で聞いて欲しいムーブを出している。
「あ、やっぱ興味無いで――」
「あー、もう。しょうがないな。そんなに聞くならロベリア先輩が教えてあげるよ。全く仕方のない後輩だな」
何かを察知した私は急いで元の部屋に戻ろうとした。しかし、それに気がついた先輩は私の腕を掴み聞いてもいない事を長々と話し出した。
「――だよ」
「…………」
あまりの内容に私は言葉を失った。
「さあ! ではあの子も向こうで目を覚ましたみたいだし、テレパシーでからかってあげるか」
可哀想に。あの子は今からこの神に思う存分遊ばれるのか。
私は生まれてしまった不幸な少女に静かに祈りを捧げた。