第4話 鬱々な日々から抜け出します! その4
「大丈夫?」
声がしたので顔を上げるとそこには頭と指を痛めてうずくまる私の顔を覗き込む少女がいた。
「ひっ!」
久々に人と顔を合わせた事に動揺したのもあり、後退りして距離を取る。
暗く広い空間の中に中学生くらいの女の子が立っていた。
肩のあたりまで伸びたライトグリーンの艶のあるストレートヘアに金色の瞳。まさに美少女そのものだった。
ギリシャの神様みたいな白い服を着ているところから考えると、きっとこの少女が私を転生させたのだろう。けど、
ズルズルズル!
どうして私のラーメン食べてるんだろう。
少女は立ったまま豪快にラーメンをすする。せっかくの白い神々しい服に汁を飛ばしながら。
いきなりの転生や初対面の人との2人っきりの空間に頭の中がパニックになっていたが、このラーメンを食べる姿を見ているとなんだか少し落ち着いてきた。
「うーん! これ、おいひいね!」
ぼーっとしている私に天使のような笑顔で微笑んでくる。
くそっ、かわいい。美少女がラーメンを豪快にすすっても、ただかわいいだけなんて。美少女ってずるい。
「あ、そうだ! 説明しないと」
不意に召喚した目的を思い出したのか少女は食べるのをやめた。
「あ……いいですよ。時間経つと麺が伸びるし」
正直な気持ちはもっとこの子のかわいい姿を見て癒されたい。もっと言えば元の世界に一度戻って家にあるラーメンを全てこの子に譲りたい。
「大丈夫! 時間止めればいいだけだし」
そう言うと少女はラーメンから手を離した。
しかし、ラーメンは下に落ちる事なくまるで写真のように空中で止まっている。しかも、先ほどまでゆらゆら揺れていた湯気までも完全に静止している。
「えへへ。すごいでしょ、私の力」
ラーメンに気を取られている私に少女は得意げな顔をしながらこちらに歩いてきた。
「まずは、自己紹介からだね。私の名前はロベリア。まあ、神みたいなかんじだね」
「あ、えっと。わ、私は花園つぼみ……です。」
「うん、知ってる。で、あなたに異世界に行って欲しいんだ」
「あ……はい」
何だか思っていたより淡々としている。
私としても異世界には興味はなくないが、もう少し説明をしてほしい。というか何で私なんだろう。
「あなたが選ばれたのは偶然だよ。で、今から転生するから、どんな姿がいいとか、どんな世界がいいとかあったら言ってね。無かったら私が決めるから」
「えっ! ちょっ、ちょっと待ってください!」
すごい自然な流れで転生作業に進めようとするロベリアを慌てて止めた。
やばい、今からキャラメイクしなければ。あと、転生先の内容と転生者独特の無双スキルと、ええっと……
「…………」
「じゃあ、私は残っているやつ食べるから。食べ終わるまでに決めてね」
必死に考え事をする私を見て、時間がかかりそうと判断したのだろうか。ロベリアは私に背中を向けてラーメンの元へ歩いていった。