第2話 鬱々な日々から抜け出します! その2
ゆっくりと音を立てないように部屋のドアを開ける。まず、顔だけ出して周りに人がいないか確認する。次に目を閉じ耳を澄ます。最後に心の中で10数えたら物音を立てないように部屋を出て一階のリビングにへ向かう。
これが最近私がやっている『ルーティン』というやつだ。
親は共働きなので日中にいるわけがないが、たまに早く帰ってきたら、休んでいたりしているため安心はできない。うっかり鉢合わせでもしたら気まずくて仕方がない。
息を殺して階段を降り一階にたどり着いた私は、そっとリビングを覗く。
今日もいつもどおり誰もいない。
「ふー……よかった」
思わず大きなため息と独り言がでる。毎回のことだがこの行動が1日の中で一番疲れる。
「さーてと、なに食べるかなー?」
誰もいないとなれば、ここは私の部屋と同じ自分の空間だ。鼻歌を歌いながらカップラーメンが置いてある棚を開けて、ポットにお湯を入れラーメンの準備をしつつ沸騰するのを待つ。
こんな生活を続けてもう2週間が過ぎようとしている。
私、花園つぼみは昔から人見知りで、小学校の頃から深夜アニメやラノベに熱中するほどのオタクだった。そんな私には友達とよべる人が少なく、クラスカーストの下の方の女の子たちと教室の隅でいつも話していた。小中学校では本気でオタクトークできるその環境が楽しかった。
しかし、高校ではその子たちとも別々になり私は家から一番近い女子校に通うことになった。
だが、新しい環境に不安を抱いた私は入学式前日に高熱を出してしまいそのまま1週間だけ休んだ。
この1週間がこんなにも恐ろしいなんてあの時の私は思いもしなかった。
この女子校には私の小中学校のクラスカーストの半分以上の女の子たちが集まっており、私みたいなオタクは1人もいなかった。また、そんな子たちのコミュ力は私からは考えられないほどすごい。1週間もあればグループなんてたやすくできる。
そんな時にオタクな私がようやく初登校しても誰も興味を持たない。孤独、まさに孤独そのものだった。
そのまま、誰にも話さず話しかけられず4月が終わりゴールデンウィークに入った。みんなのゴールデンウィークは終わったようだが、私だけ延長戦にはいったというわけだ。
これだけ休みが続けば、完全に昼夜逆転し家族にも顔を合わせづらくなってきた。頭では学校に行かなければと思うが体が言うことを聞かない。
カチッ
お、もう沸いたんだ。
沸騰を知らせるボタンの音で我にかえる。これ以上現実を見ていたらどんどんネガティブになっていただろう。
私は気を紛らわすために少し雑にカップラーメンにお湯を注ぎ、壁時計を見上げて時間を測り始めた。