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05.『一切躊躇ない』

読む自己で。


麗の『私』を『あたし』にここから変更。

「あぁ……学校に行きたくないなぁ……」


 昨日の私はどうかしてたんだ。

 麗さん――れーちゃんに喧嘩腰で会話してしまった。彼女が優しかったから良かったものの、そうでなければ問題になっていただろう。


「お母さん、学校に行きたくない!」

「いじめられてるの?」

「ううん! ただサボりたい!」

「だーめ!」


 そうだよね、だからこそ逃げずに謝らなければならない。

 というわけで、重い足取りながらも私は登校してきた。

 クラスがわかっていないというのがまだ救いだろうか。こうして静かに教室で、自分の席で待っているだけでいいのだから。

 恐らく昨日の様子だと来てくれるだろうから、すれ違いにならないためにも待機する、という選択肢を選んでいたわけだったんだけど、


「あれ……もうお昼休みなんだけどな……」


 思わずひとりで呟きたくなるくらい彼女が訪れてこない。

 麗子さんとべつのクラスで基本的にひとりとか言っていたし、あまり他の人がいるところでわいわいしたくないのかな? はっ、それとも「お前となんかいたくねえんだよ!」というやつだろうか? それかもしくは「なんであいつ謝罪しに来ねえんだ!」と怒っているのかもしれない。

 そう考えると逆に来てくれないほうがいい気がした。だってれーちゃん怒るとすごく怖いし、優しくではあるけどおなか叩いてくるし、うん。

 とにかく、お昼休みが終了し、5、6時間目が終了してもなお、彼女どころか麗子さんも来ないまま。


「ハツ、今日は金銀姉妹来なかったな」

「うん。それにいつも来るわけじゃないからね」

「俺まだ諦めてないんだけどな。藤島の連絡先ゲットしたい!」

「行ってくればいいんじゃない? 麗子さんなら交換してくれるよ。れーちゃんのはいらないの?」

「藤島姉の方はうるさそうだからな、特に興味――ぶはっ!?」


 あぁ……一切躊躇ない全力殴りが満くんのおなかにヒットした。……さすがに彼相手だとしても少し可哀そうだ。

 

「なにがうるさそう、なの?」

「わ……悪かった! でもさ……腹を殴らなくてもいいだろ?」

「うるさい。それとあんたなんかに近づいてほしくないから」

「や、俺が興味あるのは麗子――」

「呼び捨てにしてんじゃねえわよ!」


 いまのはただ遮っただけのような気がする。普段はちゃらんぽらんだけど、一応そこら辺の常識は弁えているだろうし、あまりいじわるしないでほしかった。


「悪かったわね、初音。……なんとなく行きづらかったのよ」

「う、ううん……あ、昨日はごめんなさい!」

「初音は悪くないでしょ、悪かったのはあたし……なんだから」

「だけどいちいち私が卑屈さ100パーセントで会話したから」

「い、いいってもう! それならどっちにも問題があった、ということにしておけばいいでしょう?」


 彼女が優しかったから良かったけど、そうでなければ確実に喧嘩になって関係もなくなって終わってた。今度からは気をつけないと、少なくとも嫉妬するなど論外だ。


「藤島姉、藤島妹はどうしたんだ?」

「ん、麗子は他にも友達がいるのよ。だから、姉妹といってもいつも一緒にいるというわけではないわ」

「なるほどな。姉の方はコミュ障ボッチということか」

「ま、事実だから言い返さないわ。だからこそこの子との仲を深めていきたい……この子がどう思っているのかは分からないけれどね」


 私だって彼女と仲良くしたい。とはいえ、あまり踏み込みすぎると調子に乗りそうなので、適度な距離感を探しているというのが現状だ。

 まあでも、いまはまだ純粋に仲を深めたいという気持ちが強い。彼女にとってはどれくらいのレベルなんだろうか、それは。

 親友になりたいとか……なにかがあってこ、恋人になりたいレベルとか? けれどそうしたら麗子さんがライバルになるだろうし……。


「な、麗ってそんな話し方してたか?」

「気軽に名前で呼ぶんじゃないわよ。……そうね、小学生の頃はよくしていた話し方なのよこれが。って、あんた私を知ってるの?」

「おう、小学生の頃からな」

「す、ストーカー!? キモい変態最低最悪やろう!」

「ばっ!? そんなこと大声で言うなっ! 誤解されるだろうが!」


 あまり間違っていない気がする。だって彼、気になる女の子ができると尾行して家を突き止めるくらいだもん。それでも問題にならずに済んでいるのは、基本的にお人好しな性格だからである。

 だから関係を切りたいとは思わないわけで、彼女も関わっていけば彼の良さには気付けるんだろうけども、私としてはあまり近づいてほしくないというのが正直なところではあった。


「ふむ、麗も麗子も綺麗だし胸でかいしスラッとしてるし、最高だよな」

「麗子が最高なのはあたしも同意ね」

「満くんっ、そういうことあんまり気軽に言っちゃだめだよ! 綺麗はまだいいけど、胸について言うとか有りえないから!」

「ははっ、自分は言われないから気にしてるんだろ? ま、世の中には小さいのを好む奴だっているから安心しろ! まあ俺はでかい方がいいけどな」


 胸の大きさがすべてではないと言おうとしたら先に言われてしまった。

 ……やっぱりボコボコにしてほしい、お腹でも大事なところでも殴って悶えさせてほしい。それくらいされて当然だろう、こっちの心だってボコボコにされたんだから。


「平田くん、初音さんを馬鹿にするのは許さないわよ?」

「こ、怖えな……別に馬鹿にしたわけじゃないからな?」

「本当かしら?」


 んー、麗子さんのお姉さん感はなんだろう。金色の髪で青色の瞳だとかそういうのではなく、どこか根本的にれーちゃんより上のような感じ。言い方は悪くなるけど、彼女たちのご両親が期待したくなるもわかる気がする。

 でもそれって麗子さんはそうであるように強いられている、ということなんだよね。そして、れーちゃんが麗子さんの名前を出されて複雑なように、麗子さんもまたそういう部分を褒められるのは嬉しくないのではないだろうかと、私は予想できた。

 とにかく、このふたりが揃うとすごい、やばい。金と銀、青と赤、なにもが対になっており、その綺麗さには暴力性がある。


「麗子、あたしはちょっとこのストーカー男をしめてくるから初音と帰ってて」

「ええ、よろしく頼むわね」

「ちょっ、な、なぜに俺が――ぎゃあああああ!?」


 その有様に苦笑していたら麗子さんに手を引かれ教室から連れ出された。そして昇降口で靴に履き替えてからもそれは同じで。


「ど、どうしたの?」

「え? 特に理由はないわよ? ただあなたの手、少し熱いけれど大丈夫なの?」

「お母さんには体温が高いってよく言われるよ?」

「そう、それは残念ね」

「え、な、なんで?」

「てっきり私はドキドキして発熱しているのかと思ったから」


 そりゃドキドキするけどね、いろいろな意味で。私はまだれーちゃん相手のほうが気が楽であるわけだし。


「そうだ、今週の土曜日って暇かしら?」

「うん、特に用事はないかな。お母さんはお友達と出かけちゃうしね、ひとり家にいるってのも悲しくてさあ」

「あなたの家に行ってもいい?」

「うん、べつにそれはいいよ? ただ、れーちゃんも連れてきれくれると……嬉しいかな」

「ふぅん、そう」


 わっ、なんか手を握る強さも上がってるし、なにより雰囲気が怖い。こちらを向いて笑っているはずなのに全く笑っていないというか。いや、自分でも矛盾しているとはわかっているけど、そうとしか言えなかった。


「麗が好きなのね」

「好きっていうか麗子さんといるより気が楽――あ……」

「理由を説明しなさい、言ってくれるまで離さないわよ?」


 私を抱きしめそう言った麗子さんの雰囲気は一転し、今度はすごく真面目な感じだった。問題があるなら直したいという意思が伝わってくる。

 ま、それよりももっと強烈にお山の暴力が私を襲っているわけだけど、茶化すことはできそうになかった。


「あのね? 怖いんだけどさちゃんと心から思っていることを口にしてほしいの。思ってないのに可愛いとかそういうのを言うのやめてほしいの。そういう点ではれーちゃんはちゃんと言ってくれるからさ。だから麗子さんにもそうしてほしいというか……うん」

「私は本気であなたが可愛いと思っているわよ? 言い方は悪くなるけれど、だからこそこうして一緒にいるの。私は周囲の人達が感じているようないい子ではないわ。寧ろ欲望のために動く自分勝手な人間、そう言うのが1番正しいわね」

「そんなことないと思うけど……。だって麗子さんは優しいし……」

「あなたが可愛いからよ」


 相手の容姿がいいから優しくする、か。

 それってべつに責められることではない気がする。人は基本的にいい物をもとめるというか、いや、道具ではないんだけど……そういうものではないだろうか。

 私だってふたりが綺麗だから関わりたくなくて関わりたいわけだし、少なくともそれを悪いと指摘するのはできないことだ。


「それと、呼び捨てにしてくれないかしら」

「いいの? ……麗子」

「……なんかダメになりそうだわ」

「え、大丈夫? というか……そろそろ離していただけるとぉ……」


 学校から近いし自分の家の方角へと帰る生徒が多いので、いまだって見られてしまっていてかあと恥ずかしくなる。で、彼女も指摘したら離してくれたんだけど、


「え、顔がすごく赤いよ? 風邪を引いてないよね!?」


 顔どころか全身が真っ赤で心配になるくらいだった。彼女は「ええ……どうしてかしらね、私でも分からないけれど……」と口にし、金色の髪をいじる。


「と、とりあえず、早く家に帰ろっ? そうしないと心配だよ!」

「……ごめんなさい、今日は先に帰るわ。……さようなら」

「あ……うん、ばいばい」


 うーん? 怒り……ではないよね、雰囲気的に言えば甘々だったわけだし。なんかモヤモヤするし、あんな麗子のこと初めて見たからすごく落ち着かない。おまけに抱きしめから解放されたらされたで寂しいし。


「初音ー!」

「れーちゃん、早く帰って麗子のこと見てあげて?」


 私では力になれないなら彼女を頼ればいい。私と違って側にいられるし、きっと姉パワーで麗子を癒やしてくれるはずだ。


「うん? そういえば麗子はどうしたのよ?」

「熱が出てるみたいなの……お願い! 心配だから行ってあげて?」

「む……分かったわよ。でもそのかわり条件があるわ、今週の土曜日、あなたの家に行かせてくれる?」

「うん、それでいいから早く!」

「はぁ……行ってくるわ、じゃあまた明日ね!」

「うん、よろしくね」


 よし、これでもう大丈夫っ。

 あとはゆっくり帰って、家に着いたらポッカーでも食べよう。

句読点、くどいかな。

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