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02.『アニメキャラ』

読む自己で。

 放課後。

 珍しく満くんは他の子と遊びに行くとのことだったので、私はひとりで学校をあとにした。

 途中のコンビニに寄ってモナカのアイスを購入する。それを律儀に半分に割り、ゆったりと味わっていたときのこと。


「天崎初音!」


 不機嫌そうな感じの麗さんが突撃してきた。

 慌てて避けたらドカンとコンビニの壁に衝突し、彼女が「いったぁ!?」と声をあげる。……おでこが赤くなっててちょっとおもしろ――可哀そう!


「だ、大丈夫?」

「……なんで避けるのよ!」

「えぇ、だって危ないし……」


 うーん、やっぱりどう考えてもこの子のほうが妹だよね? なんかアホそうな感じするし、麗子さんから好き勝手にやられていたし。


「天崎初音! あんたが麗子に近づくのは嫌なの!」

「うん、そもそもふたりは両想いでしょ? 邪魔する気はないよ? ね、それより教えてほしいことがあるんだけどさ、ちゅう……してたんでしょ?」

「し、しし、しているわけないでしょ! それに両想いなんかじゃないし」

「え、両想いじゃないの? それはともかく、しっかりとしたお姉ちゃんがいてくれて羨ましいなあ」

「あ゛?」


 え、すごく怖い感じ……でもあんな姉がいてくれたら理想の生活だと思うんだけど。金髪で綺麗な姉がいるというだけで自慢できそうだ。


「私が姉だからね!?」

「ええええええ!? そんなわけないじゃん! 麗さんのほうがどう見たってアホ――なんだよ!?」

「はあああああ!? あ、あんたっ、ほぼ初対面のくせして言ってくれるじゃないこのやろう!」

「ひぃ!? す、すみませんでしたっ、このモナカをあげますので!」

「ならこっちを貰うわ!」

「あっ!」


 そ、そっちは私が食べてたほうなんだけど……。


「麗さん……それ私が食べてたやつ……」

「はぁ? なによ間接キスくらいで。ならそっちも貰うわ」

「えぇ!? あぅ……私のモナカぁ……」


 まあでも、綺麗な人の味わって貰えたと思えば気が楽か。

 これ以上ここにいても仕方ないので、私たちは歩きだすことにする。

 なんかおかしなことになったなあ。どうして私は麗さんと歩いているんだろう。

 というか麗子さんと一緒に帰宅するわけではないのか。お昼休みのだってあれはキスしていたんだろうし、少し羨ましいのは確かで。


「私、こっちだから」

「うん、ばいばい麗さん」

「名前で呼ぶんじゃない! この泥棒猫!」

「……名字、知らない……」

「藤島よ! まだ名前呼びは許さないわよっ」

「……うん、ばいばい藤島さん」


 べつに私から一緒にいたいと望んだわけじゃないんだけど。彼女と別れて残りの道を歩き家へと歩く。


「ただいま」


 とはいえ誰かがいるわけではないので、リビングのソファに寝転んだ。

 スマホをポチポチといじって、でもなにも意味のない行為ですぐにやめた。

 理想はあのふたりと仲良くなって、連絡先とかも交換していろいろやることなんだけど、あのふたりの間に入れるようなスペックではないことはわかっていて。

 けれど自分から動くと離れるとわかっている身としては、他の子を探す気にもなれない。つまりまあ詰みというか、1年生間をただただ普通に生活するしか選択肢はなそうだ。


「でも男の子には興味ないからなあ……」


 もし興味があったら満くん? 有りえないあんな子。

 だって女の子と付き合っているときに他の女の子を優先するような男の子だ。どれだけ最低で信じられない存在なのって話。

 おまけに私の母すら狙おうとする欲深さ。まあいろいろと常識がないのと、そもそもこちらに興味を抱いていないということで、なにも始まりようがない。


「普通に学校生活を楽しもう」


 それが1番。学生の本分は勉強をすることだもん、恋ができなくたって死にはしないんだから! ……羨ましいのは否めないけれど。




 1週間が経過した。

 相変わらず満くんは他の女の子とばかり関わっていた。母には毎回逐一報告しているので自分の評価が下がっているとは露にも思うまい。

 そんな彼のことはどうでもいいので私の方になるけど、結局探しにいってはいないので特に代わり映えのしない生活を送っているということになる。

 あれから藤島姉妹とも関われていないし女の子の恋人を作る! なんてゴール地点にはいつたどり着けるだろうかと悩んでいると、


「天崎初音はいるかしら?」


 銀色の長い髪を揺らしながら麗さんがご登場。ちなみに、麗子さんの方も同じくらい――腰くらいまで伸ばしている。


「藤島さんどうしたの?」

「『どうしたの?』じゃないわよ! どうして私達のところに来ないのよ!」

「え、だってクラス知らないし……」


 わざわざ休み時間に会いに行くほどの仲でもないし。

 どんなに頑張っても友達、親友以上にはなれないとわかっていて頑張れる人間がいるだろうか。って、学生の本分は云々と考えておきながら結局……ださいなぁ。


「あんたの連絡先を教えなさい。1番いいのはライネのIDね」

「いいけど……えと、AMS――」

「口で言うんじゃないわよ! 誰かに勝手に登録されたらどうするの!?」

「う、うるさ……」


 一応心配してくれているらしいし彼女にだけプロフィールを見せて登録してもらうことにしたんだけど、その拍子に綺麗なお顔が近づいてドキドキした。

 あとなんかいい匂いもする。ついでに言えばこの前のえっちな顔を思い出してごくりと喉を鳴らす。やばい、うん、マジ本当に。


「ありがと。って、どうしたのよ? 顔が赤いわよ?」

「う、ううん! ほら、ちょっと冷えるからかも!」

「ふぅん、ならこうすれば温まるかしら?」


 彼女はスマホをポケットにしまうと私の頬を両手で……。


「ちょっ! ……やめてぇ……」

「なによその顔? 私に触れられたら嫌なの?」

「違うよ……でも、ダメだって!」

「ふんっ、本当にあんたは可愛くないわね! もう知らないからっ」


 あ……違うんだよ、私はただドキドキするからやめてほしかっただけで。

 というか私もなに意識しちゃっているんだろう。彼女は優しさからそうしてくれていただけなのに、どれだけ飢えてるのって話だ。麗さんが去ってしまったので突っ伏す。恥ずかしさと熱さを誤魔化すためのものであった。


「ハツ、なんだあの綺麗な女子は!?」

「……藤島麗さん」


 どうせ麗さんは麗子さんのことが好きだし、少なくとも彼に取られることはないということで、今回は普通に名前を教えた。


「ハツ、あの子のIDを教えてくれ」

「嫌だよ、そんな勝手なことできないもん」

「なんでだよ、別にただ友達になりたいだけだぞ?」

「……あ、麗子さん!」


 今度は金髪むすめさんがやってくる。……一応麗さんが見栄を張っていないか確認しておこう。


「こんにちは」

「こんにちは! あの藤島さん、えと麗さんのほうが姉って本当のこと?」

「ええ、麗のほうが姉ね。もっとも、双子だからほとんど差はないけれど。それよりあなたは男の子も狙う趣味があるの?」

「ううん、全然ないよ。この人は女の子なら誰にでも手を出す最低な人だからね、なんで一緒にいるのかわからないけどっ」


 横で固まっているアホ男さんを見て苦笑する。麗さんの時点で綺麗だったのに、麗子さんまで現れて驚きすぎてしまったんだろう。私もどうしてこんな綺麗な子たちを知らなかったのかと驚いているけど。


「藤島、ID交換しないか?」

「別に構わないわよ?」

「ちょっ、ダメだって!」

「あら、どうして?」

「ど、どうしてって……こんな最低男さんと交換したら悪用される……から」


 危機意識が低いと危ない目にあうぞ! 私が頑張って止めなければならない。こういう点では麗さんのほうが確かに姉だ。麗さんだったらきっと満くんから言われても断っていただろうから。


「ふふ、心配してくれているの? そ・れ・と・も、自分ができていないのに先にされるのは複雑だから?」

「うぐっ!? し、心配しているだけだから!」

「ありがと、お礼に抱きしめてあげるわ」

「あっ――」


 私はわかった、麗さんがあんな蕩けていた理由が。

 だって暴力的なまでに熱く柔らかいんだ。なにより自分にはないお胸が全面的にアピールというか攻撃を仕掛けてくる。同性だろうと落とす、そう伝えて来ている気がしていた。

 ふと横を見ると羨ましそうにこちらを見つめる満くんが。ざまあみろ、昔の私はそういう気分だったんだぞ! やっと見ているだけしかできない苦しみがわかったようで安心だ。


「ん、残念だけれど交換はできないわ。だって天崎さんが嫉妬してしまうもの」

「……それなら仕方ないな。でもいつか、気が向いたら頼むよ」

「ええ」


 妹のはずなのに包容力が高すぎる。でも、このままずっと抱かれていたい……。


「っと、予鈴が鳴ったわね。これで戻るわ」

「え……」

「ふふ、そんな顔をしないの、また放課後に会いましょう。そのときは麗も一緒にだけれど、あの子はどうやらあなたのことを気に入ったようだから」

「でも……」

「いくらでもしてあげるわよ、またね」

「うん……」


 やばいやばいやばい! なんで出会ってから全然仲良くしていない子に抱きつきたいと思っているの私っ。

 ……麗子さん去り満くんが話しかけてくる。


「ハツ、お前なんか酷くなってないか? なんつうのかな、女子を求める力が」

「い、言わないでよ! 私だってどうしてこうなっているのかわからないんだからさ! あのふたりと接していると……女モードになるというか……」

「って、ハツは女だろ? つか、昔からそうだったけどな、気になる女子を見つけたときは」

「み、見るんじゃない!」

 

 そう、こんな最低男さんだとしても、ずっと側にいてくれた幼馴染だ。

 小学生の頃から支えてくれているしあんまり悪く言いたくはないんだけど、好きな子を取られた恨みが大きくなりすぎてそうなってしまう。ある程度、私にも余裕ができたら返していきたいと思う。

 可愛い女の子を紹介すれば喜ぶだろうか。それこそ藤島姉妹との接点を作ってあげるのが、なにより彼のためになるのかもしれないけれど。


「満くんは麗さんや麗子さんと関わりたい?」

「そうだな、友達になっておいた方がいいと思ってな」

「どうして?」

「ま、なにか起こった時に楽だと思うからだ」


 なにか起こった場合は相手にしてもらえないんだし接点あっても意味ないと思うけどなあ。なにを考えているのかわからないときがあるし、そのほとんどが無意味なこともあるので、もう追求するのはやめておいた。


「満くん、いつもありがとね。でも、お母さんを攻略しようとするのはやめてほしいかな。わかるけどね? 非攻略キャラクターを見て『この子違うのかよ!』となるのはわかるけどね?」


 アニメキャラの母を見て「1番可愛いじゃん!」と感じることも少なくない。


「冗談に決まっているだろ? でもな、純子さんってハツより可愛いよな!」

「うん、お母さん可愛いよね」

「攻略してぇ……駄目だって思うほどしたくならないか?」

「わかる!」


 特に麗さん麗子さんとか!

 結果なんてどうなるのかわからないんだ。諦めるのは違うと思うんだよね。

 だからどちらか片方を私の――頑張ってみようかな?

金髪で綺麗でおっぱいでかい子に抱きしめられたら女の子でも落ちそうだな。

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