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 これは以前に僕が経験した話です。

 僕の友人にいわゆるオカルトマニア、その方面でコネのある人物がいました。その友人が悪霊だか悪魔だかなんだかの、不気味な声が入ったテープを独自のルートで入手したと言ってきたんです。僕には霊感とかもなかったので胡散臭い話だなと思ったんですが、同時になぜか興味も湧きました。それで友人からそのテープを借りてみることにしたんです。今にして思えば、自身でそういった類の話の真偽を確かめたかったのかもしれません。友人は「お前を信用してるからな」と念を押してから、そのテープを貸してくれました。

 それでマンションの自室に帰宅したあと、テープを聴いてみることにしました。よく見れば時代を感じさせる古めかしいカセットテープでした。ところどころに痛みもありましたが、再生する分には問題ないと思いました。もちろん再生機器も持っていたので。ラベルにはアルファベットで『D』と書き殴ってあったんですが、どういう意味なんだろうと思いながらも、余り気にはしませんでした。少し怖かったので、テレビを付けっぱなしにしながら、録音テープを再生。しばらく聴いてました。けどそれが……なにも聴こえてこないんです。おかしいな、友人がテープを間違えたのかな、とも思いました。その時、急に隣人が壁をバンバン叩いてきたんです。お隣りには、車椅子に乗った足の悪いお婆さんが住んでました。下からの低い目線ながら、常に僕を上から目線で睨んでくるような嫌な感じのお年寄りでした。音楽を聴いてると壁を叩かれたこともありましたね。けどその時は、テレビの音量も大きくなかったんです。しつこく叩いてくるから、頭にきてこっちも壁を叩いてやりましたよ。すると、珍しくもすぐ静かになりました。テープの方はというと、結局何も入ってませんでした。

 翌日の帰宅時。マンション入口付近が何やら騒がしかったので、居合わせた管理人さんに何事かと聞いてみました。管理人さんの話によると、お隣りに住んでいたあのお婆さんが、昨日亡くなったとのことでした。昨日が昨日だったので、人事にも思えず驚きましたよ。しかも詳しく聞くと、どうやら自殺だったということです。天井から布か何かを垂らしての首吊り自殺らしい、という話でした。けどその話を聞いて、僕はなにか違和感を覚えました。

 後日友人にテープを返す時、確認として改めてテープのことを聞いてみました。僕が受け取ったあのテープは、確かに音声が入った本物で間違いないと言ってました。僕は一層もやもやを感じました。

 その後、帰り際に僕はなぜかふと気づいたことがあったんです。お婆さんは足が悪くて車椅子に乗ってたのに、天井から首を吊るなんてこと、出来るのかなって。

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― 新着の感想 ―
曰くつきのカセットテープに流れる無音。 突如隣人から叩かれる壁。 隣人の自殺と残された不可解な謎。 隣人はカセットテープから流れる”ナニカ”を聴いたのだろうか。 じわっと来て胸に残る恐怖感。 今日寝れ…
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