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とある学者の奇妙な冒険

前作『とある詐欺師の魔法の杖』の後日談のような、そうでないような、めくるめく夢のような連作風のショートショート。


※おまけ的要素なので前作を読んでなくても読めます。





 イタリア史上稀に見る最悪の水害が始まった頃、とある学者が雷に打たれて死亡した。

 大水害の後、学者の腐乱死体がフィレンツェで見つかる。

 この話はそれから遙か後のこと――



  *



【『とある詐欺師の魔法の杖』おまけミニショートショート その1】


『期限切れの言葉』


 円形の小さな窓の外では、赤砂の景観がどこまでも広がっていた。

 砂面には曲線的な凹凸はあっても、足跡などはまるでない。

 小窓の内側にあるのは、居住空間。白を基調とした極めて簡素な部屋。


「愛してる」


 部屋に備え付けられた小綺麗なベッドの上で、男が隣に座っている女の耳元に甘く囁いた。

 そうして男は女の腰に腕を回したまま、彼女の返答を待っている。

 男のとろけるような言葉を受けて、女はピクリと反応した。

 ほんのりと潤んだ綺麗な桃色の唇が、静かに動き出す。


『期限切レデス。期限ヲ、更新スル場合ハ、スロット二、カードヲ、挿入シテ下サイ』


 男は落胆の表情を浮かべる。だが気を取り直すと、すぐに懐から有効残高のあるカードを取り出した。

 そして女から言われた通りに、慣れた手つきで彼女のスロットにカードを挿入する。


「愛してるよ」


 男は、再び甘く囁いた。前回よりも想いを込めて。


「――私も愛してるわ」


 女も満面の笑顔で、百万年間続く愛の言葉を繰り返す。

 男は満足げに優しく女を抱きしめると、いつも通りの熱く激しい口づけを交わした。互いの四肢を絡ませ、ベッドが軋む。

 こうして今日もまた、火星収容所の夜がゆっくりと更けていった。



  *



 とある学者が、イタリアのフィレンツェで立派な水死体となり、腐乱し始めていた。

 そして、体内で蛆虫も涌き出していた頃のこと。

 摩訶不思議、オタク大国日本では――



  *



【『とある詐欺師の魔法の杖』おまけミニショートショート その2】


『インコ』


「オハヨウ、オハヨウ」


 インコの声がして、俺は目を覚ましたのだった。

 俺はベッドから起き上がり、毎朝起こしてくれる律儀なインコに優しく声をかけてやる。


「おはよう」


 そうして朝の挨拶を済ませると、いつも通りにインコの籠の戸を開けてやるのだ。


「オハヨ、アイシテル。キョウノアサ、ツクル」


 そう言ったインコは籠から這い出ると、愛用のエプロンを着てから台所へ向かった。

 今日も朝食の準備を始めているな。

 いそいそと朝食を作る甲斐甲斐しいインコ。

 その後ろ姿を見て、俺はつくづく思ったよ。


「インコの裸エプロンぱねー」




ここまでありがとうございます。以下は各作品の後書きです。


『巨乳娘と貧乳娘』

雰囲気は少林サッカーを少し意識しました(太極拳娘が初登場する辺り)。

巨乳云々より巨乳娘と貧乳娘の対立構造を端から見ると、嫉妬されちゃう側と嫉妬してしまう側という構図。微笑ましく可愛らしいなと。まあ度が過ぎなければ。

結果的には貧乳娘の共感話の方が割合多くなってしまいました。

余談。胸というは太古ではお尻にあった異性へのセックスアピールが、二足歩行の進化の過程で上に来た物らしいです。

現在の猿でもお尻が赤く大きい雌猿である程雄猿からモテます(成育した雌という証や発情期の印)。

女性の胸も大きければアピールとして目立ち有利なので、男性が本能的に巨乳に惹かれるのはその為との事。




『禁断の完熟メロン』

ベッドの上に乗せられた食物の様に無力な兄。妹の見つめた先。それは兄の持つ皿の上のメロンなのか、それとも兄か。

言わずもがなですが。

幾つかの言葉を元に即興で構成と推敲して、直接的な言葉や描写が一切無い非エロでライトな背徳的エッチ小説に挑戦しました。

食事は本能的にエロスや暴力性に繋がるので、そこを主眼に表現してます。

劇中の果物もそうですが、焼き肉や蟹とか余り調理しない食べ物もそうですね。

禁断の果実といえばリンゴですが、今作はメロンがモチーフです。




『とある詐欺師の魔法の杖』

タイトルは流行の某ライトノベル作品に便乗しました。

「禁断の完熟メロン」と同じ手法で、複数の言葉を元に即興で構成し推敲して形にしました。

ご存知無い方の為に注釈。ハシシというのは大麻、マリファナの事です。イタリアだと麻薬カルテルがあってコカインが多いでしょうね。

麻薬なんか吸ってもなんもいい事ないよ、という念を込めました。

ファンタジックなショートショートのつもりが毒のあるブラックになり、僕の中では異物が混じったトリップ系な感じです。

実は集英社の某サイトでやっていた掌編賞で優秀賞を貰った作品。別作品で最優秀賞も頂いて賞金を初めて貰いました。嬉しかったです。

審査員は有名な石田衣良さんでした。




『とある学者の奇妙な冒険』

なんかごめんなさいね!

連作風ではありますが、本編の二篇は前作読んでなくても問題無く読めます。

タイトルはジョジョからです。前作と語呂の感じも合わせてみました。

おまけとして楽しんでもらえたら幸いです!

もしもインコの意味が解らないという方がいましたら、是非お電話下さい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どのショートもそれぞれ独自の味わいがあって良かったです。個人的には特に巨乳と貧乳の話が良かったです。 [一言] ここまで読みました。
[良い点] オチが良いところ 特に『とある詐欺師の魔法の杖』 [一言] いつもお世話になっております。 楽しく拝読しました。
2022/08/12 10:44 退会済み
管理
[良い点]  短編集お邪魔しました(^^)!  色んなお話があって面白かったです。  とある詐欺師の魔法の杖がけっこう好きな展開でした♪  オチがすとんとする感じ(^-^)   [気になる点]  D…
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