季節様の大変身!
皆さん季節を知っているでしょう。春夏秋冬のあの季節です。
季節様は私たち人間よりもながいこと生きています。なので季節様は、知られたくない秘密をいっぱいもっています。季節様の秘密を聞けば『どうして季節が変化するのか』がわかることでしょう。
昔々のことです。この頃の季節様はとても元気いっぱいであり、雪を降らせることで、マンモスなどに涼しいお布団をプレゼントしていました。しかし同時に、寒さで人間を困らせる悪戯ものでもありました。
ある日、季節様は思いました。『ヒトに悪いことをしたから怒られるかも』と。季節様は怒られることは嫌でした。しかし大好きな悪戯をやめるわけにはいきません。季節様はとても困ってしまいました。どうにかして怒られないように悪戯をしなければなりません。
季節様は誰にも聞こえない声で言いました。「そうだ。僕が悪戯することがバレているから怒られるんだ。他のヒトになれば怒られない」と。なんと季節様は他のヒトに変身することを思いついたのです。
しかし賢い季節様はすぐには変身しません。季節様は言います。「他のヒトとして生きるんだ。もし家族やお友達と会ったら、悪戯したから怒られちゃう。お別れしないと」と。季節様はみんなとお別れすることにしました。
さらに季節様は言いました。「そうだ。お別れのプレゼントをあげよう。でも悪戯はとても大切だ。悪戯しないとおもしろくないなあ。だからこっそりと悪戯をプレゼントしよう」。季節様はみんなにささやかな悪戯をプレゼントすることにしました。みんなにこっそりと贈る、秘密のプレゼントです。
まず季節様はお友達のマンモス君と会います。マンモス君のとなりでは、大きなマンモスが雪のお布団でぐっすり眠っています。
マンモス君はいきものなので季節様のことが見えません。しかし季節様はそんなマンモス君とも仲良しでした。
季節様はマンモス君に言います。「マンモス君にも雪のお布団をプレゼントしよう」。
マンモス君には季節様の言葉は届きません。マンモス君はいきものだからです。しかし季節様の思いが通じていたのでしょうか。マンモス君は大きな声で「雪を降らせたやつ出てこい!」と、マンモス君は季節様を探しています。
季節様はうれしくなりました。マンモス君が自分を探してくれているからです。季節様はとてもうれしかったので、すごくいっぱい雪を降らせて、マンモス君に雪のおうちをプレゼントしました。白くて素敵なおうちです。
マンモス君はすてきな雪のおうちに包まれて言葉も出ません。山のように大きく真っ白なおうち。マンモス君はずっと雪のおうちを出ることはありませんでした。
季節様はぼおっとした幸せな気持ちでいっぱいです。マンモス君が自分を探してくれました。そしてマンモス君はプレゼントのおうちに住んでくれました。季節様は暖かい気持ちでいっぱいです。
季節様は言いました。「知ってるヒトに探してもらうのは幸せだなあ。僕が変身すればずっと探してもらえるんだ。なんてすばらしい悪戯なんだ」と。季節様はあらためて悪戯の大切さを学びました。
季節様は次のお友達である人間に会いにきました。最後のお友達です。
人間もいきものなので季節様のことが見えません。しかし人間は季節様が見えないのに、季節様に食べ物やお宝をプレゼントしてくれる不思議なお友達でした。
季節様は言います。「僕が寒さで困らせたヒトたちだ。プレゼントもいっぱいもらった。マンモス君のときよりもすごくたくさんの雪で、お礼の悪戯をしなきゃ」と。
しかし季節様の思いが届かなかったのでしょうか。人間たちはこんなことを話します。「隕石様のおかげでとても寒くなったなあ」と。また他の人間が言います。「雪を降るのも隕石様の力によるものだ、おっかないことだ」と。
季節様はむっとしつつもうれしくなりました。むっとしたのは自分がやった悪戯なのに他のヒトが褒められたからです。うれしくなったのは悪戯で人間から怒られるのは隕石だからです。
それでも季節様はすこし不機嫌でした。季節様は人間に雪の悪戯をプレゼントするのはやめにしました。お別れプレゼントを渡さないというのもまた悪戯なのです。
さあこれで秘密のお別れのプレゼントはおしまいです。季節様がついに変身するときがきたのです。季節様は思います。「さて、どのように変身しようかな。今の僕は寒いけど、涼しくなることも、暖かくなることも、暑くなることだってできるぞ」と。
季節様がふわふわと空で悩んでいると、足元にいる人間たちの声が聞こえてきます。季節様は聞きました。「変身するならやっぱり4つのものには変身できないとな」という人間の声を、確かに季節様は聞きました。
また他の人間も言います。「わかるわかる。悪いことするなら第4形態ぐらいまで変身したいよな」と。
季節様は思いました。「僕も悪戯という悪いことが大好きだ。僕も4つのものに変身しよう」。
こうして季節様は春夏秋冬の4つの季節に変身することになったのです。まずは悪戯のことがばれないように春夏に変身し、みんなが悪戯を忘れた頃に秋冬と元の姿にもどる。このように姿を変えて、季節様は今でも悪戯をプレゼントし続けています。
季節様は優しいので人間へのプレゼントも忘れません。春には虫や変なヒトで場を乱し、夏は熱でヒトを干し、秋は鮮やかな緑色の葉を茶色く染め、冬は寒さでヒトを眠らせる。季節様の悪戯はそのように続いているのです。
しかし春夏秋冬の季節が季節様の悪戯だとは誰も知りません。季節様は怒られずに悪戯を続けたいからずっと秘密なのです。季節様は変身しながら、秘密のプレゼントをこっそりみんなに贈り続けているのです。