かめにゃんと駆ける――2
彼は組んだ足を行儀悪く机の上に放り出しながら座っていた。その姿勢のまま、未だにこちらに視線を向けている。それは見られているというより、執着を持って睨まれているように感じられ、僕の体は強張ってしまった。
僕が視線に気づいたと見るや、彼は僕の目を捉えたまま近づいてきた。
「おいお前」
彼は視線だけではなく、声色も穏やかではなかった。もしかして僕のせいなんだろうか。僕はぼんやりしてるところがあるとよくお母さんには言われているし、そのせいで、いつの間に不快な気持ちにさせてしまったのかもしれない。とにかくこういうときには――
「ご、ごめんなさい!」
まずは謝るべきだ。僕は声を発した勢いのまま、しっかりと頭を下げた。なんとか、これで落ち着いて貰えないだろうか。
そして、しばらくの静寂が訪れた。一体なぜなのだろう。僕と彼だけではなく、さっきまでの賑わいまでもが静かになった気がする。僕は不意に居心地の悪さを感じた。
とにかく、話をするときはまずは目を合わせないといけない。僕は小学校の先生の教えを強く念じて勇気を奮い起こし、上目遣いで彼の表情を伺った。
すると、どういうことだろう、彼は何故か口が半開きで、少し目を泳がせているではないか。もしかして、びっくりしているのだろうか。でもびっくりしているのはこっちも同じだ。
とにかく、まだ彼は怒っているかもしれない。謝るならまずは行動からだと誰かが言っていた。もっと深く反省の意を示さないと。
「待て待て、まだ何も言ってねぇだろうが」
僕が次の謝罪の手段を考えていたら、さっきよりも少し柔らかい声で、彼が思考を遮ってきた。