かめにゃんと駆ける――1
柏原さんは友達が多いと思う。
彼女はいつだって、誰かと元気に話していた。コンビニスイーツだとか、芸能人の話をしていたと思うけど、僕はどちらもあまり知らない。お菓子は自分で作ったほうが楽しいと思うし、テレビを見るよりかめにゃんを作ったり集めるほうが好きだ。
ともかく、彼女は恐らく誰とだって友達だ。だから、誰に聞いたって彼女の行方を知っているに違いない。
放課後の廊下は、いつだって生徒がたくさんいる。その誰もが自分から話しかけたことのない人たちだから、緊張してしまうけれど、早くしないと柏原さんが帰ってしまうかもしれない。それにしても、もう一ヶ月も経つのに、まともに話したことがあるのが柏原さんだけなのはやっぱり少なすぎだろうか。僕はもっと彼女を見習うべきなのかもしれない。
僕は廊下を通り過ぎて、自分のクラスである一年三組の教室に入った。廊下だけではなく、ここにだって暇を持て余した生徒たちがまばらにいる。彼らはただ談笑していたり、スマホを持ち寄ってゲームをしていたりしている。もちろん、彼らが教室に戻ってきた僕を気に留めるはずはない。
しかしただ一人、こちらをじっと眺めている男子生徒がいた。