一話 「ビバ、僕の新たな学校生活」
※2018/1/1修正加筆
一応、毎週月曜日18時更新の予定です。
よろしくお願いいたします。
僕の名前は、南 千曲。
地元にある普通の公立高校に通う、普通の男子高校生だ。
通うといっても、今日が初めてだけどね。
なぜなら今日が入学式だから。ピッカピカの一年生である。
「ふぅ……何とか間に合いそう。やっぱり学校は近い所を選んで良かった。……早朝から鬼ババアにしごかれる時間が長くなるとこだけは悩みどころだけど」
そんな記念すべき日も、僕は早朝からいつも通り鬼ババア───もとい母に戦闘訓練と称した地獄のしごきを受けていた。
ちなみに僕は特にオリンピックを目指しているわけでも、スポーツ格闘技の選手というわけでもない。
「僕はいつまであんな特訓をさせられるんだ……あんなの絶対に“普通”じゃない」
ぼやきながら慣れない通学路を歩く。
僕は鬼ババアの魔の手から逃れ、これから素晴らしい学園生活を送るための算段を立てようと思考する。
まずは部活動だ。
中学の頃─────と言ってもつい最近までのことなのだけれど、僕は帰宅部だった。
特にやりたい事も無かったので、自室でネットゲームなどをしながらゴロゴロするのが僕の日課だったんだ。
そういう怠惰で自堕落な時間が僕は大好きだった。
すると、鬼ババアは決まって僕を過酷な訓練に拉致───もとい誘ってくる。
……いや、これだけ鬼ババア鬼ババアと(心の中で)言ってはいるけども、僕だってもう高校生。
わかってはいるんだ。
それが親の愛、優しさだと言うことは。
あの人は、どうも若い頃から父さんと世界中を旅していたらしい。
だから“一体どんな戦地を歩き回れば、人間がそんなに強くなれるんですか?”ってなぐらい強い。
それこそ、ド派手なエフェクトを散らして大スペクタクルバトルを繰り広げる僕の大好きなネットゲームの中のキャラクターの方がまだ現実味があるくらい強いんだ。
きっとネットゲームで言う、いわゆる“効率厨”だったんだね。
だから、僕の自堕落な生活に口を出したくなるに違いない。
効率的な(地獄の)訓練を課してくる。
あ、ちなみに普通の会社員であるはずの父さんは、その鬼ババアのさらに万倍強いらしい。
というか、鬼ババアの師匠らしい。どんなやねん。
とにかく、話を戻すと部活動である。
愛を持って怠惰な僕に訓練を課すのであれば、やりたいことを熱意を持って説明しさえすれば、意外とすんなり許してくれるのではなかろうか。
その証拠に、学校行事や委員会などで帰宅が遅れた日の夜は訓練も優しい。
ともあれば、まずは怠惰な生活を許せない鬼ババアに、部活動への熱意をアピールする。
もちろん真面目に部活動に取り組むつもりはないが、まず入部して適当にやり過ごし、幽霊部員の地位を確立する。
後は学校帰りに適当にブラブラ遊び歩いたり、ネットカフェでゲームに勤しめば良い。
遊ぶ時間もでき、さらに(地獄の)訓練の時間が減る。
なんということでしょう。完璧な計画だ。
「ククク………、フハハハハハハハ………!!」
何はともあれ、外に出てしまえばこっちのものだ。
ビバ、僕の普通の学園生活。