第8話(この耳が偽物だと看破されてしまった!)
ステータスを開いてみて僕は、確かに僕の能力が一通り表示されていると分かる。
こんな風に人間のステータスも表示できるのかと僕が思っているとそこでカイルが驚いたように、
「……自分の能力をこんな風に空間に表示できるのか?」
「え、えっと、これってすごく珍しい魔法になったりするかな?」
「普通はギルドで測定するか何かをしないと見えないものが、こんな簡単にできるのか。その下のモザイクは、“個人情報により、閲覧制限がかけられています”と書かれているな」
「そうだね。個人情報って何だろう? 見れるのかな? モザイク消えろ~消えろ~、あ、消え……ぐぎゃあっ」
僕はそこに書かれている情報について気づき、慌てて手で隠そうとした。
そしてどうにか隠してから、ゆっくりと目撃者であるカイルを振り返り、
「み、見た?」
「いや、うん。銀色の狼耳の女の子が好きらしいとか人形を集めているとか他にも……」
「見なかったことにしてください。お願いします。切実に!」
「あ、ああ、うん」
頷くカイルが何となく嬉しそうなのは何故だろうと思った。
そこで僕はカイルの動く獣耳が銀色だったと気付く。
くぅ、これでカイルが女の子だったら……そう僕は思わざる負えなかった。
いい人だし優しいし、最高だ。
そう思いながらも僕は、ステータスとして表示されたこの恥ずかしい情報を消すべく念ずる。
消えろ、消えてくださいお願いします、そう僕が願うとふっとそれが消えた。
「よかった、ずっと出たままなのかと思ったよ」
「それはないだろう。いつかは魔力が尽きる……いや、あれだけ魔力があれば、出たままでも行けるかもしれないか」
「僕の魔力、そんなに多いのかな」
「凄く多い。あれだけあれば他者の魔力回復の仕事にそのままつけるかもな」
「そうなんだ。他の人の魔力回復か……」
いい仕事を教えてもらった、後でアルバイトに使えないかなと僕が思っているとそこでカイルが、
「だがタクミはやめた方がいいかもしれない。可愛いから」
「可愛いからって、僕は平凡だよ。でもどうして?」
「……他者を魔力を回復させると、その、“欲情”が煽られるから、場合によっては襲われる」
「そうなんだ。男に襲われると。うう……だ、だったら、カイルの魔力を回復させるよ! 親切にしてもらったし」
「俺の魔力?」
「うん、僕、カイル“専属”で魔力回復するよ」
そう僕が答えるとカイルは、再び空を仰ぎ見て小さく震えている。
どうしたんだろう、そう思っていると先ほどまで戦っていた白鳥のレイトが人型になり、目をまわした猫耳少年メルを連れて現れた。
「ふう、まったく、マタタビ酒はあれほど止めろといったのに酒癖が悪くて」
そんな幼馴染のレイトに、カイルが嘆息をして、
「随分と気に入っているんだな」
「倒れたのを拾ったので、私の物ですから」
微笑んだレイトにカイルが何とも言えない顔をした。
そこでレイトが僕に目を移し、頷き、
「どうですか? カイルは“優しい”ですか?」
「? はい、凄く親切で優しいです」
「なるほどなるほど……これは様子見ですね」
「? 何がですか?」
「いえ。その偽物の猫耳も可愛いですよ?」
そこで僕はレイトに、この耳が偽物だと看破されてしまったのだった。
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