第7話(よし、“ステータス・オープン”)
どうやら許嫁ではなく幼馴染らしいのだが。
そこでレイトが、
「こちらの方にいらっしゃると分かりまし慌ててたので総出で探しに来たのですが、こんな人の多くいる場所に出てきていただいて探す手間が省けましたよ」
「……もう少しその嫌味な言い方は何とかならないのか?」
「嫌みの一つも言いたくなりますよ。幼馴染で乳兄弟の貴方が書き置き一つで姿を消したともなれば、大騒ぎですよ?」
「……」
カイルが沈黙して、そっぽを向いた。
それに困ったように苦笑するレイトは、そのままそばで何かのジュースを飲んでいたメルの頭をなぜて、
「まあ、私としても、おかげでこんな可愛い子を拾えましたから良しとしますが」
「にゃあ、頭をなぜるな、子ども扱いするな!」
「お腹が空いて私の目の前で倒れていたのはどなたでしたか?」
レイトが微笑んでメルに告げると、メルが小さく呻いて黙る。
しかも更にレイトは、
「そして今日も僕は大人だー、と言ってここの人達にマタタビ酒を分けてもらっていましたね?」
「! そ、そういえば何で話していないのに……」
「お酒の匂いがしましたしね。それにいつもより気が大きくなっていましたから、ああ、またかと」
「ま、またかって……」
「マタタビをなめたメルはそれはもう凄い事になりますからね。以前なんて……」
「! な、何回同じ話をする気なんだ!」
「では貴方との出会いの話をもう一度つぶさに、カイル達に話しましょうか?」
「だ、だから鳥のくせに昔の事をねちねちと。三歩歩いたら忘れろ!」
「生憎ですが、貴方との出会いは忘れられませんね。衝撃的で」
「……喧嘩を売る気か? 買うぞ?」
「仕方がありませんね、少しお相手しましょう。まだマタタビが抜けないようですし。……カイル様、少し失礼します」
そうレイトは僕達に告げるとともに離れた場所に。
周りのお酒を飲んでいた人たちも、面白そうに様子を見ている。
そこでレイトとメルが光に包まれたかと思うと、一匹の茶色い猫と、白鳥に変化した。
戦い始める二匹を見つつ僕は、
「えっと、二人はどんな関係なんだろう」
「さあ。俺は良く知らないからな、二人の出会った経緯については。だが、レイトはよほどメルという少年が気に入ったみたいだな」
「そうなんだ」
「ああ、大抵の人間とはつかず離れずの位置だったからな……よほど気に入らない限り」
「へぇ、そうなんだ」
そう思った所で、白鳥のキックが茶色い猫の頭にクリーンヒットした。
痛そうだなと僕が思ってみているとそこでカイルが、
「まあ獣になっているから回復力も早いし心配することも無いだろう。それよりも今のうちにタクミの特殊能力を見た方がいいんじゃないのか?」
「そうだね“鑑定スキル”……まずは、自分に向かって使ってみるのがいいかな? どうすればいいんだろう?」
「鑑定のイメージを思い浮かべて呟いて、後は、そのイメージを声に出していってみるのもいいかもしれない」
「イメージ……ゲームっぽくていいのかな? よし、“ステータス・オープン”」
僕が小さく呟くと低重音がして目の前に桃色の光の四角形が現れて、そこに僕の基本能力と、一部モザイクがかかった状態でステータスが現れたのだった。
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