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第67話(ここでこんなブーメランが)

 そのまま諦めてしまうのかとの問いに、レイスは黙ってしまう。

 出来れば僕を諦めてくれればと思いはするけれど、そこでレイスは深く息を吐き、


「確かに俺は挑戦していない、か」

「そうですそうです、というか、もうこうなったら僕も相談に乗るので、どうですか?」

「……どうして相談に乗ろうと思った」

「僕は、自分の身を守るのにその方が都合がいいだけです。それに、ハッピーエンドが僕は好きなんです。皆が幸せな方がいいじゃないですか」


 そう告げた時レイスは、きょとんとした顔で僕を見た。

 じっと僕を見て、それから珍しく優し気な表情になり、


「これは、リファスが気に入るはずだ」

「え?」

「時々様子を見ていたらしいからな。それで気に入ったといっていたしな」

「え、ええ!」

「癒される感じがするな。ふむ、花嫁が嫌なら愛人などはどうかな」

「そっちはもっと嫌です!」

「はは、冗談だ。それで、相談に乗ってくれるんだろう?」

「はい。あ、でもその前に……」

「その前に?」


 僕は自分の恰好に目を落としてから、


「この花嫁衣装はちょっと」

「いや、折角だからお前を取り戻しに来るであろう恋人に、そのまま引き渡してやる」

「ええ!」


 どうやらこの格好のままカイルに引き渡すらしい。

 何て事だと僕が思いながら、僕は頭を抱えた。

 そんな僕にレイスが楽しそうに、


「どうせ一緒に居た、カイルという銀狼の国の王子が好きなのだろう?」


 と言う。

 僕は今、何かを聞き間違えたのかと思った。

 けれど黙っているとさらにレイスが続ける。


「気になる相手と言っていたからな。そして一緒に居て特に仲の良さそうなのがそのカイル王子らしいから、それで構わないだろう……どうした?」


 そこでレイスは僕の様子がおかしいのに気づいたらしい。

 問いかけてくるレイスに僕は、


「カイルは、その、銀狼の国の王子なのですか? 僕をここに呼び出して、花嫁にしようとしたというか、その相手というか……」

「そうだな。まあ、その異世界人との結婚が嫌で城から逃げ出したという話だったが、それでも一緒に居たのは気に入ったからだろう。 ? どうした」

「カイルが王子だって知らなかったのですが」

「……そうだったのか? 知らずに好きになったのか?」

「……責任を感じたから、僕に優しかったのかな」


 ふと僕は呟く。

 カイルは会見えて優しくて責任感が強いから、自分の責任を感じて僕にそう言ってきたのかもしれない。

 胸が締め付けられるように痛い。


 気になる、ではなく、すでに僕は、カイルを……。

 そこでレイスが小さく笑った。


「そうだな、ここで、こう返してやろう。勝負をする前に勝負を捨てるのか?」

「……ここでこんなブーメランが戻ってくるとは思いませんでした」

「本当にな。他に、そういった責任感以外で好意を寄せられたことはなかったのか?」


 レイスの言葉に、そこで僕は思い出す。

 僕はそう、ここに連れてこられる前に、


「カイルに告白されたんだ」

「それは羨ましい。俺はまだ告白すらされていないし、していないのに」

「……僕にアプローチは来ていたんだ。だから、僕は何も不安に思うことはなかったんだ」


 カイルはもうすでに好きだと言ってくれていて、不安に思う事は僕には何もない。

 一瞬ひやりとしたけれど、僕の杞憂だったようだ。

 義務感ではなかったと。

 と、そこでレイスが、


「では、俺の相談に乗ってくれるかな?」


 その言葉に頷き、僕は昔からリファスとレイスが仲良しで、特にレイスがリファスを追いかけまわしていたと知る。

 会話は自分の中の思いを整理するだけだった。

 けれどそれだけでレイスは、自分のすべきことを決めたらしい。


 そこで……建物が小さく揺れたのだった。

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