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第64話(花嫁衣装)

 かちっ、かちっ、かちっ

 針が動くような音がして、僕はゆっくりと目を覚ます。

 どこか肌寒いと僕は思う。


 周りは暗いけれど、ここは何処だろう。

 そもそも僕はさっきまで何をしていたんだっけ。


「そうだ、確か“鑑定スキル”を使って……痛いっ」


 そこでズキリと何かに刺されたかのように僕の頭が痛む。

 今回使った“鑑定スキル”はいつもと違っていたように思う。

 膨大な魔力が僕の体から出ていって代わりに、大量に何かが入ってきて押しつぶされそうになって。


 そういえばリファスが僕の能力について話していた気がする。

 神話の力だとか何とか。

 カイルといた時も“鑑定スキル”を使った時、普通よりも情報量が多いと言っていた。


 役に立てて嬉しいと思ったけれど、その処理の過程で幾らかを無意識下で選定しているのだろうか? 

 周りを見回したときに見慣れた道でも、ある日家が建て替えされてしまえばどんなものだったか思い出せないように、日常に馴染んだようなその大量の情報の中で僕たちは、必要な情報を取り出している。

 僕は、あの場所を回復するために、大量の情報を手に入れたのだろうか?


 “世界の根幹(アカシック・レコード)”とか何とか言っていたけれど、駄目だ、上手く考えられないと僕は思う。

 それでもこの場所がどこか、それだけは確認しておかないと。


「確か、最後にリファスの知り合いである、レイスという人が僕の前に現れた気がする。でも何でだろう……暗いけれど、段々と目が慣れてきたかも」


 そう思って周りを見回すと薄っすらと暗がりの中で時計が見える。

 違う、暗がりではなく僕の頭がぼんやりしているらしい。

 意識は覚醒したけれどまだ、周りがぼんやりしているようだ。


 魔力の使いすぎでこんな症状が出たりするのだろうかとふと思う。

 この世界の魔法について僕はそんなによく知らない。

 もっと僕は警戒心を持つべきだった。


 やはりカイルがいたから僕は甘えてしまったのだろうか?

 無防備でいられたのも全部カイルがそばに居てくれたからだ。 

 僕はもっと自分で……この世界の事を積極的に学ぶべきだったのでは?


 今更ながらそんな後悔が僕を襲うけれど、仕方がない。

 そこでゆっくりと瞳を開くと周りがはっきりとよく見える。

 そして時計の音の方を見ると、ねじ巻き式の大きな時計が部屋の中では僕に対して反対側にある。


 けれどそこまでならまだ良かったのだ。


「な、何で僕、こんな服を着せられているんだろう!」


 白く透き通るような布がいくつもフリルのように重ねられて、ところどころに真珠や光輝くガラス玉、絹のような光沢のある布で作られた花が飾られている。

 しかも頭にも透き通るような布が付けられている。

 これはベールというものではないのか?


「花嫁衣装というものでは……い、いや異世界だからもっとこう、別の意味があるのかもしれない。そうに違いない。でもこの世界男もokだったような」


 つまり僕はここに連れてこられて花嫁にされそうになっている疑惑!

 だ、誰がこんなことを。

 そう僕は思っていると、


「起きたか」


 部屋の扉が開かれて、レイスと呼ばれていたはずの人物が現れたのだった。


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