第63話(カイルの怒り)
カイル達は現在、竜の国に来ていた。
「それで、タクミは何処なんだ!」
「カイル様、落ち着いてください!」
「これが落ち着いていられるか! その、リファスという竜人は何処にいる!」
怒鳴り散らし、今にも説明しようとしている竜人の案内役に襲いかかろうとしているかのように見えるカイルを、左腕に抱きつくようにしてレイトが、右腕にメルが抱きついてそれ以上動けないように止めている。
だがこれだけカイルが激怒しているのには原因が有る。
それはタクミに関する話だ。
カイルはタクミが連れ攫われた事にも激怒していたのだが、その攫った張本人がタクミの力以外に何を望んでいたのか……ここに来て初めて知ったのだ。
「うまく砂漠をもとに戻せたなら、タクミをそのリファスが花嫁にするだと! “真実の瞳”の能力者だと!? “世界の根幹”に触れられる世界に愛された“神子”だと!? そんなものはどうでもいい、タクミはタクミだ! 返せ、俺のタクミを返せ!」
「カイル様、落ち着いてください。激怒する気持ちはわかりますがここでそう叫んでいても、どうにもなりません!」
「そうですよ、カイル……様、落ち着いて! でないと冷静にならないと本当にタクミを取られちゃいますよ! 竜の人達だってタクミの能力を狙っているんですから!」
「く……」
今更ながら様をつけるのに違和感があるらしいメルがそう告げると、カイルの体から力が抜けた。
カイルの後ろでレイトとメルは顔を見合わせて、安堵したように息を吐く。
「タクミ……」
小さく愛しいものの名前を呼ぶカイル。
カイルは自分の油断が許せない。
タクミ自身が自分を平凡だと言うが、見る者が見れば“可愛い”のは確かなのだ。
それこそカイル自身が惹かれたのだから、他にもそういう人物がいてもおかしくなかったのだ。
だから最新の注意をもっとカイルはするべきだったのだと自身を責め立てる。
ぐっと強く手を握り怒りを抑えようとするが、それでも怒りは収まらない。
そこで誰かが走ってくる。
彼は目の前の案内人に耳打ちすると案内人はさっと顔を青ざめさせる。
それから、躊躇するようにカイルを見てから案内人は、
「たった今、リファスの居場所が分かりました」
「どこだ!」
「砂漠になってしまったある地域です。そこで、タクミ様のお力をお借りしていたようなのですが……」
そこで案内人は口ごもる。
そして意を決したように、
「その試しに行った癒やしの後、リファスの遠縁であるこの国の王子、レイスによってタクミ様は何処かに連れ攫われました」
「なんだと?」
「ですので今から捜索を開始いたします」
「……だったらこちらで勝手にレイスという人物を探し出してもかまわないか? 正確にはタクミを、だが」
「え、ええ、我々も場所が分かりませんので、構いませんが……」
しどろもどろになる案内人。
それにカイルが今更ながら笑った。
「この国の範囲ならきっとタクミを探せる。ここの国の人間の許可も取ったしな。どうだ、レイト、俺は冷静だっただろう?」
「……そうですね、カイル様。別の方向で怒りが爆発しつつも計算する頭はあるのは、さすがと言わざるおえません。では、“探査”を行いますか?」
「もちろん。そしてすぐに探しに行くぞ。案内人、他のものにも伝えておくように」
そう、カイルが怯える案内人に冷たく告げたのだった。
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