第60話(嘘ですね)
カイルは現在、自身の城に帰ってきた。
カイル様、と呼んでくる彼らを無視して真っ先に向かったのは、宰相イルのいる部屋だった。
ちなみにレイトの兄である。
ドアをノックもせず開けると、見ていた書類から顔を上げたレイトによく似た彼が、
「カイル様お帰りなさいませ。そろそろ戻ってくるころだと思いました。また、レイトは恋人付きで戻って来たのですね、いい傾向です」
「そちらの話は後にしてくれ、イル。タクミを……異世界から呼び出した人物が竜族の、それも王族にさらわれた。だから王家として、タクミ……その異世界転移者について聞いて欲しい。そして取り戻したい」
「なるほど。つまりカイル様は、その異世界からの人物がとても気に入っていると」
「……そうだ」
「彼は呼び出した神子でもあり、嫁候補でもあります。そうですか気にいって頂けましたか」
「だが、タクミが俺の……花嫁になるのを拒むなら、神子としての役目だけをこなして元の世界に戻ってもらおうと思う」
それを聞いたイルは沈黙した。
沈黙してカイルを見てため息をつき、
「何故ですか」
「俺がタクミが好きだからだ。一目惚れした後も一緒に居るとその気持ちが抑えられなくなっていく。だから、タクミが俺を拒んでかな良い思いをさせるくらいなら……俺の物にならなくていいと思う」
「嘘ですね」
「何がだ」
「とてもではありませんが、我慢できるような顔をしていませんよ、カイル様」
「……」
「ですが今はその件に関しては保留で。状況が少し変われば、またその……タクミですか? 異世界人の名前は」
「そうだ」
「ではタクミ様の気持ちも変わるでしょう。様子を見ている限り、彼もまんざらではなさそうでしたがね……」
楽しそうに告げるイルに、カイルは我慢だと心の中で呟く。
このイルははっきり言って性格が悪い。
こうしてカイルを揺さぶり、どんな状況かを見定めるのだ。
しかも今の話ではカイルの動向は全て筒抜けであるらしい。
注意を払ったというのにこのザマかとカイルは自嘲気味に思う。
悔しい事は多々あるが、今は一刻も早くタクミを……そうカイルが思っているとイルが微笑みそして、
「先ほど竜の国トールから、神子をお借りしたといった話がこちらに流れてきました」
そう、イルが告げたのだった。
竜の館にて僕はリファスに連れられてある場所に来ていた。
馬車に乗って移動までするような場所である。
その場所は、草木の生えない砂漠のようだった。
ここにはサボテンのような植物すら生えていない寂しい場所だ。
どうしてこんな場所に連れてこられたんだろうと僕が思っているとそこで、
「実はここは森でもあるのです。全てが枯れ果ててしまいましたが」
「そういえば何かがおかしくなっているみたいなのを聞いたような……」
「このような例はほかでも沢山あります。ですからまずはこの場所を、“鑑定スキル”で見て欲しいのです」
「……分かりました」
どうやらこれが僕がここに連れてこられた目的らしい。
だったなら早く済ましてしまおう、そしてカイル達の元に戻るんだと僕は思いながら、魔法を使ったのだった。
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