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第58話(半分本気です)

 そういえば竜族って何を食べるんだろう? なんかこう、僕が予想をしないような食べ物とか出てこないよな……と思った僕の前に出されたのは、果物の盛り合わせだった。

 

「果物はお嫌いですか?」


 僕は先ほど攫ってきた彼が不安そうに僕に聞いてくる。

 なので僕は、


「いえ、好きです」

「それは良かった。この果物は今が旬ですので、ぜひ堪能していって頂ければと」

「はい……えっとその、そういえば貴方のお名前を聞いていないのですが……」


 そこで僕は先ほどから話していたこの竜族の人が何という名前なのか、ずっと分からないままだったので聞いてみた。

 それに目の前の竜の人は瞳を瞬かせてから、


「そういえば様子を観察していたのですでに出会っていた気になっていたのですが、名前を名乗っていませんでしたね。私の名前はリファスと言います」

「そうなのですか、リファスさん……僕は、タクミです」

「では改めましてタクミ、よろしくお願いします」


 微笑んだ竜の人リファスは、優しそうに僕に言う。

 さて、そうして果物に僕は手を付けたわけですが、それが全て熟していてとても美味しい。

 美味しいなと思って食べていると、竜の人リファスが優し気に僕を見ている。


 微笑ましいものを見ているかのようだ。

 にこにこと笑っているその様子がまるで“兄弟”でも見ているかのようだ。

 と、そこで彼が、


「可愛いですね、タクミは。見ていると昔のレイスを思い出します」

「レイス?」

「ええ、私の遠縁の王族で、昔は幼く素直で私の後をよく歩いてついてきていましたね。彼は特にそのオレンジ色の柔らかい果実が好きでしたね」

「あ、これ、凄く美味しくて僕も一番好きです」

「それは良かった。私達は基本的に果物しか食べませんので、お口に合うかどうかと思ったのですが大丈夫なようでよかった」


 それを聞いた僕は、この中で一番美味しい果実はマンゴーに似ているよなと思いながら食べつつ……あることに気づいた。

 基本この竜の人達は果物しか食べないらしい。

 つまり、パンやらお肉やらはここにいると食べられない。


 確かにこの果物は美味しいが、でも果物だけなのはちょっと……と僕は心の中で思いつつ、


「でも僕の力を使ってどうにかなれば、それで僕は帰してもらえるんですよね?」

「……」

「あの……」

「いえ、タクミがあまりにも可愛いので花嫁候補になって頂けないかと思ったのですが、その顔では難しそうですね」

「じょ、冗談ですか?」

「半分本気です。本当はもう少し仲良くなってからと思ったのですが、これだけ可愛ければ手を出そうという者もいそうなので先に」


 そう言われてしまった僕は凍り付くしかない。

 そもそも僕は……そう思うとカイルの事が頭に浮かんできてしまう。

 でもここで事あったなら僕は何をされてしまうんだろう、そう僕が思いつつ、ふと気づく。


「そういえばリファス以外の竜の人が、僕に会いに来ないのは何故ですか?」

「こちらの事情で色々とありますから。特に貴方はレイスの好みでありそうですし」

「え?」

「とりあえずはこの部屋にいる限りは安全ですので、外には出ないようにしてください。私もこの部屋の外の安全は保障しかねます」


 そうリファスは困ったように告げたのだった。


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