第56話(カイルの秘密)
カイルは、部屋のドアを開けるなりレイトに、
「タクミは戻ってきているか!」
その問いかけに、丁度メルを押し倒して上半身の服をはだけさせようとしていたレイトが恨めしそうに、
「もう少しで押し倒せた所で何か御用ですか? カイル」
「タクミはやはりいないのか」
「? 湖に二人っきりで行ったのでは?」
「……攫われたかもしれない」
ポツリと呟いた言葉にレイトが目を細めて、
「どうしてそう思われたのですか?」
「タクミと少し話をしていて、タクミだけが先に走って宿に戻ったはずなのに、途中の道でタクミの靴が片方落ちていた」
「なるほど。確かに靴を片方落としていなくなるのは妙ですね。ですがそれではタクミはどこかに逃げたということになって、森の中にはいった……いえ、そこまでタクミが無謀というのも変ですね。逃げるなら、我々の宿かカイルのいる場所に逃げたほうがよほど安全だとすると……その場から、“転移”した?」
ふとレイトが呟いた言葉に、押し倒されていたメルが大きく目を開かせて、
「“転移”って道具やら設備やら魔法が複雑で強い力がないといけなくて、王族じゃないと使えないような特別な魔法じゃないか。……まさかその王族が!」
メルがそう衝撃を受けたように話しているがその様子を見て、メルとかいるが顔を見合わせて、吹き出した。
メルはどうして笑われているのか分からず目を瞬かせて次にレイトを睨みつけて、
「何で僕を笑うんだ」
「いえ、そういえば話していなかったなと」
「何が! あっ、み、耳は止めっ……」
そこで獣耳にレイトがキスをしてビクンとメルが体を震わせて、頬を赤らめる。
このまま続きにはいってしまいそうだと感じたカイルが、
「レイト、今は緊急事態だ」
「……私としたことがメルの可愛さに惑わされてしまいました。……それでカイル様、そのタクミの靴には魔力の残渣がありませんでしたか?」
「竜族の、転移の魔力をかすかに感じた。だが何処に逃げたのかは遠すぎて分からない」
「なるほど……ふむ。ですか竜族の気配で転移能力を持つ王族……。これは一度城に戻って、直接交渉するしかなさそうですね。王族からの問いかけともなれば、あちらも答えないというわけにもいかないでしょう」
そういった話をしているとそこでメルが、
「な、なんだか今の話を聞いていると、王族と直接話せるように聞こえたのだけれど」
「どうしますか? カイル」
「……どうせ知られるのならもうここで話したほうがいいか。俺は、銀狼の国、フェンリルの第一王子、カイルだ」
メル画沈黙してレイトを見上げて次にカイルを見て再びレイトを見上げ、
「本当?」
「本当ですね。でもメルの驚いた顔は可愛いですね」
「な、何を言って、や、やめっ、耳は……」
小さく震えながら耳にレイトがキスをして感じさせられるメル。
その仲の良さげな様子を羨ましいとカイルは思う。
カイルもタクミと……と思ってしまう。
同時に絶対にタクミを取り戻してやると決める。
誰にも渡さない。
「タクミは俺のものだ」
そう小さくカイルは呟いたのだった。
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