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第54話(妙な魔力)

 逃げていくタクミを見て、カイルは今更ながら何で聞いてしまったのだと思った。


「……もう少し我慢できなかったのか? 俺は。いや、無理だ」


 自問自答して、カイルは深々とため息をつく。

 目の前でレイト達が仲睦まじい様子でいるのも含めて、そして……。


「もうすぐ城に戻るから、なんだろうな。随分と俺は“臆病”だ」


 そう深々とため息をつく。

 つかざる負えない。

 だってカイルは、タクミがこの世界に来る“原因”になった存在だからだ。


 別の目的があるといっても、切っ掛けはおそらくはそれだ。

 しかもカイルは、やや一目惚れに近い形でタクミが気に入っていて、更に一緒に居るうちに惚れこんでしまったのだ。

 あの能力も魅力的だが、それの重要性にも気づいているのかいないのか。


 けれど気づいていたとしてもあんな風に、自身の能力を使い手伝ったりするかしないかには関係ないだろう。

 それはタクミの性格による。

 しかも頭を撫でると幸せそうな顔をするし、俺は誘われているのかと思ったくらいだと、カイルは思う。


 そもそもこの世界の事に疎いタクミに、カイルの獣耳を触らせたりしたのも……すべてカイルの欲望によるものだ。

 ずっと狙っていた。

 出会った時からずっと。


 召喚した彼らの思惑に乗るのが悔しいというのもあって、そしてタクミが異性愛者で元の世界に帰りたがっているのも知っていたから、黙っていた。

 でもタクミもカイルに心を許してくれている気がして、そして他にもいくつか黙っている事実がカイルの重責になっていて、つい、告白してしまったのだ。

 否、カイル自身がもう抑えきれない感情に、押し潰されそうだったからなのかもしれない。


「でも完全に否定はできないみたいだったな。これからもお友達でいてね、みたいな答えでなかったのは、期待していいのか?」


 我ながら未練がましいと思ってカイルはそう呟く。

 それでもタクミが自分からカイルを選んでほしいという気持ちが、カイルの中で強い。

 そこで、奇妙な魔力をカイルは感知する。


 王族特有の転移魔法、それが発動する気配だ。

 なんで? どうしてこんな場所で?


「胸騒ぎがする。……あそこは、さっきタクミが走っていった……! まさか!」


 カイルは元来た道を走りだす。

 ただの気のせいであって欲しい、そう思って進むとそこでカイルは見つける。

 タクミのはいていた靴が片方、道端に落ちていることに。


 それを拾い上げて、わずかに空間転移した魔力の残渣を見て取る。

 その気配から、それがどの種族なのかにカイルは気づく。


「どうして、竜族が? いや、それよりもタクミが無事かを確認しないと」

 

 たまたまあそこに靴の片方を落としただけかもしれない。

 そんな希望的観測を持ちながらカイルは、宿へと急いだのだった。








 僕は、目を覚ました。

 どうやらふかふかのベッドの上らしい。

 いつの間に宿に戻って来たのだろうと思って瞼を開くと、天蓋が見えた。

 

 あの、お姫様の眠っているベッドにかかっている、透き通った布が幾つもかけられたものである。

 このベッドにはそれがあった。


「な、何ここ。なんで僕……そういえば意識を失う前に声を聞いたような」


 そう僕が呟いた所で、誰かが部屋の扉を開けてこの部屋にやって来たのだった。


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