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第53話(好都合ですね)

 一瞬僕は、カイルが何を言っているのかよく分からなかった。

 次に僕はようやく、カイルが僕の事を好きだといったのに気づいた。

 カイルは優しい。


 そして親切にも僕を城まで届けてくれるらしい。

 しかも、今まで特に手出しをしてこなかった。

 ただ僕を可愛いと言って頭を撫でてくるくらいで。


 この世界では男同士で恋人になるのはよくあるらしい。

 周りも皆、今まで会った人はそうだった。

 だからもっと早くに僕は認識すべきだったのかもしれない。


 カイルが僕を好きだと。

 好きだから親切にしてくれていたのかもしれないと。

 でも僕は、カイルの事がそこまで好きなのか分からない。


 僕は元々が女の子が好きで、でも、相手が男だけれどカイルなら……と考えてしまう。

 なんで、今なんだろう。

 もう少しだけ、いい人で、友達で居させてくれなかったんだろう。


 やはりあと数日で城に着くからだろうか?

 ちがう、そうじゃなくて、そんな僕に都合の良い事ばかり考えて責めるんじゃなくて、僕は、僕は……。

 冷汗が噴き出るのを感じる。


 喉がカラカラに乾いて、でも僕はどうしたらいいのか分からなくて凍り付く。

 そんな僕にカイルは、


「……ごめん、我慢できなかった。タクミを見ていたら愛おしさが募って、言ってしまった」

「あ、謝らなくていいよ。……カイルは親切だったし、その……」

「それで、今、答えを期待していいか?」

「! そ、それは、その……」


 僕は答えられない。

 カイルが好きか嫌いか、で言えば多分僕は好きだ。

 でもそれは恋愛感情かというと僕は、まだよく分からない。


 そもそも僕は獣耳の女の子(二次元)が好きな彼女がいない=年齢のごく普通の男子だったのである。

 それが特殊能力アリとはいえ、こんな異世界に連れてこられて、恋人候補として呼ばれたなんて……。

 でもそれは多分、相手によるのだ。

 

 相手が、カイルだったら?

 僕は頷いてしまうかもしれない。

 そして現に告白を今されて、僕は今答えを求められてしまっている。


 完全な不意打ちの告白。

 僕はとても混乱している。

 感情としては今すぐ頷きたいけれど、男同士と考えると僕は素直に頷けないでいる。


 だってそんなの、今まで一度も考えたことが無かった。

 でもカイルと一緒に居るのは好きだ。

 これは僕の我儘なのだろうか?


 好きなのは好きなのだけれどここで頷いてしまっていいのか?

 恋はしたことはあるけれど、両想いになるのは初めてで、訳が分からなくなる。

 ぐるぐると言葉が頭の中で回っていて、理性と感情がせめぎあって、僕はどうしたらいいのか分からない。


 どうしよう、僕はどうすればいいんだろう。

 困惑してしまう僕にカイルが近づいてきて頭を撫でる。

 心がとろんと溶け出してしまいそうになって、でもそれではいけないと思って僕は、


「ごめ、ん、カイル……少し、考えさせて欲しい……」

「……そう、だよな。突然言われたら困るよな」


 苦笑するカイルに僕は胸が痛む。

 違うのだ、そうではなくて、僕は……。

 

「ごめん!」


 あまりにもいたたまれなくて、僕はその場から逃げ出した。

 メルに相談に乗ってもらおう、そう思いながら僕は来た道を宿に向かって走って走って走って……そこで。


「一人ですか? 好都合ですね」


 そんな声を聞くとともに僕の視界が闇に閉ざされたのだった。


 

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