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第52話(料金が足りないんだ)

 こうして僕達は徒歩や馬車で、移動をすることに。

 それからの二日間は、あっという間に過ぎて行った。

 そしてその日は、少し早いが街道沿いの宿屋に泊まることになって、四人部屋に僕達は来ていた。


 最近、やけにメルがレイトに懐いている気がする。

 今だってレイトの隣でくっついている。

 やはり兄や弟のアレにあてられたのかと僕が思っているとそこで、


「なんで僕をじろじろ見ているんだ、タクミ」

「いえ、なんだか仲がいいなと思って」

「それはそうだ。だって僕、ミストフィア兄様に許可されているのは、タクミを送っていった城までだし」

「あ……で、でも、帰り道は?」

「多分レイトが転送してくれるんじゃないのか?」


 そうメルがレイトを見上げると、レイトが微笑み、


「帰りも徒歩です」

「え?」

「そうすればその分長く、メルと一緒に居られるでしょう?」

「レイト……」

「ちなみに私の答えは決まっています。選ぶのは、メルですよ? これは、猶予期間でもありますから」

「……うにゅ」


 メルが体育座りになり顔を足の間に隠した。

 詰まる所、遠回しに今、レイトは告白したようだ。

 今まで気づかなかったというか考えないようにしていたらしい。


 だがそこでメルが僕の方をきっと睨み付けて、


「タ、タクミの方こそどうなんだ! あそこの都市からタクミが行く城までは転送陣を使えばすぐだったじゃないか」

「え? あ、確かに都市だからありそう……カイル?」


 そこで黙っているカイルの名前を呼ぶ。

 するとカイルが、


「実はこの前の転送の費用を、ミストフィアからもらっていなくて、料金が足りないんだ」


 その言葉にメルが沈黙した。

 更にカイルが、


「あの雰囲気でその分の料金もと言えなかった俺に問題があったのか。すまない、タクミ」


 メルを責めるのではないが、メルが居心地悪そうに固まってから猫に“獣化”してレイトの膝に向かう。

 そうしてレイトに撫ぜられてメルは幸せそうだ。

 それを見ていると何となく羨ましく僕は感じながら、そしてある種の期待を持ちつつ僕は、

 

「ぼ、僕もカイルと一緒に居たかったし。だからこれはその、運が良かったと思う」

「そうなのか?」

「うん」


 大きく頷くと僕の頭をなぜながらカイルが、


「タクミは本当に可愛いな。あざとい存在だ」

「あ、あざといって……」

「……まだ夕暮れまで少し時間があるし、この宿の近くに湖があるらしいから見に行かないか? 二人っきりで」

「二人っきり?」

「俺も、レイトとメルにあてられてしまった。特にここしばらく」


 そうやらカイルはメルとレイトの仲睦まじい光景に、砂糖をはくような思いを抱いてしまったらしい。

 確かにこのイチャイチャぶりは、少し二人だけの時間を作ってあげてもいいかもしれないとは思う。

 だから僕はカイルと一緒に、近くの湖に向かったのだった。








 宿の傍にある細い道。

 その先にそこそこ大きな湖があるらしい。

 その近くには小さな村もあるという。

 

 けれどその湖に向かうとそこには人っ子一人いない。

 でも風が心地いい、そう思いながら僕はカイルに、


「もしも元の世界に戻ってまたこの世界に来れたら、僕、今度はもっと冒険を色々してみたいな」

「ギルドカードもあるからな。そうだな、タクミにはそのうち魔法も教えて、ダンジョンにでも潜ったりしてみるか?」

「ダンジョン!」

「ああ。どうだ?」

「楽しみかも!」

「本当は危険な場所だけれどな。もっとも俺はタクミを怪我させるつもりはないが」


 そう言ってカイルが笑う。

 またこの世界の戻ってくる。

 そうしたらまたカイルと一緒に、今度は冒険したりこの世界を楽しめる。


 それはとても魅力的な案に思えた。

 と、そこでカイルが僕を見つめる。

 その視線がやけに熱っぽく感じてしまう僕。そして、


「俺は、タクミが好きだ」


 カイルはそう僕に告げたのだった。



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