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第50話(あの“マタタビ森草”のお酒)

 それから急いでミストフィアが屋敷に材料を取りに向かった。

 貴重とはいえ購入できるものはすでに手に入れられていたらしく、それらをエルダ伯爵の屋敷にすぐさま持ってきて、鍋“ナナカマドナ”に入れる。

 この鍋“ナナカマドナ”は、このエルダ伯爵の領地内で採れる“レアウラの鉱石”というものから作られる魔法の道具で、この鍋で作られた料理は非常に美味しいので有名らしい。


 ただ貴重な金属なので、あまり出回っておらず、伝説の鍋と呼ばれているらしい。

 この貴重な金属は武器にしても強力なものが出来、この武器は表面にこの金属で周りを包み込むだけでも魔法を纏いやすくなるため、主にこの用途に使われることが多い。

 だから少量でも高値で取引される、そんなものであるらしい。


 そして鍋というくらいに大量に使うのは、超高級品であり普通の場所では手に入らない。

 手に入ったとしても値段が高く、受注生産となり出来上がるのに数か月はかかる。

 ならばそれを待つよりは、借りてしまった方が早く薬が作れるという話に。


 というわけで伝説の鍋を取り出してきたエルダ伯爵のおかげで何とか薬を作れた僕達。

 一部残った“マタタビ森草”はお酒につけて、他に果物や香辛料を入れて貴重なマタタビ酒にするらしい。

 何でも作って数時間で飲めるそうだ。


 薬が上手く効いたら、お祝いをしましょう、という事で僕達はリーフィアにその……夏場の川のように濁った怪しい色の飲み物をリーフィアにもっていく。

 無臭なのは良かったが、不安が付きまとう。

 そしてその薬をリーフィアに飲ませると、リーフィアの猫耳が淡く白く光ると……。


「あれ、体が軽い?」

「リーフィア、どうですか?」

「えっと、体の重みや痛みがまるで無くなってしまいました。もう一人で自由に歩けるかも?」

「まさか、そんな即効性があるのですか?!」


 驚いたようなミストフィアだが、そこでリーフィアがベッドから降りる。

 そして靴を履いて、床を歩いていく。

 僕が見ている範囲では普通だった。と、


「動けた。普通に動ける!」

「リーフィア、やったね」

「リーフィア、よかったです!」


 嬉しそうに、リーフィアの二人の兄達がリーフィアに抱きついている。

 仲の良い兄弟の様子に、僕がほのぼのしていると僕の後ろでエルダ伯爵が、


「では、お祝いの準備をしよう。スウィン」

「はい、あのお酒も美味しくなっている頃でしょう」


 といった話をしていたのだった。








 リーフィアの病気が治った歓迎会は、結構盛大に行われた。

 元々ミストフィアが来た時に歓迎しようとしてエルダ伯爵が準備していたのもあって、こうなったらしい。

 だが中央に置かれたケーキを見てミストフィアが、


「……エルダ伯爵。ここにあるのはウェディングケーキのように見えるが」

「……」


 都合が悪くなったらしいエルダ伯爵が沈黙し、ミストフィアが問い詰めていたりしていた。

 そしてメルは、あの“マタタビ森草”のお酒を飲んで、


「今日という今日こそは、どちらが男らしいかを決めてやる。真に男らしいのは僕だ! タクミ、決闘を申し込む!」

「訳が分からないよ!」


 といった展開があったが、その後すぐにメルはレイトに挑発されてどこかに行ってしまった。

 助かったと思いつつ、“マタタビ森草”のお酒を少し味見した僕も、そのお酒のグラスを片手にテラスに向かう。

 夜風が涼しくて、熱くなった頬がひんやりとする。と、


「タクミ、どうした?」


 カイルがやって来たのだった。

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