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第49話(妄想は着せ替えだけか?)

 こうしてこじれた二人の恋愛模様は、丸く収まった……かのように見えた。

 だがそこで、はっとしたようにミストフィアが、


「だが僕は公爵家を継がなければならない! そうすると、エルダ伯爵、お前が僕の所に“嫁”に来ることになるな! お前に耳と同じ色の純白のドレスを用意してやろう!」

「何を言っている。ミストフィア、お前が嫁に来るんだ。リーフィアを治すための材料が必要なのだろう?」

「ふ、残念だったな。既に幾つもの材料は僕の手中にある。それは交換条件としては使えないな」

「そうですか、残念です。監禁した時に着せようと思っていたドレスやアクセサリーが大量にあるのですがね。ミストフィアにとても似合いそうなものばかりを選んだのですが」

「な、な……何でそんなものを」

「いえ、スウィンに、『監禁部屋を作ろうなどという事を考える暇があるのでしたら、ミストフィア様を“嫁”にした後どんな格好をさせたりしたいのかを考えていてください』と言われたのでドレスなどを購入して妄想していた」

「……一つ聞いていいか?」

「何でしょう」

「妄想は着せ替えだけか?」

「……」


 そこでエルダ伯爵が沈黙する。

 つまり沈黙という名の肯定で、エルダ伯爵の中でミストフィアは、あれでそれであーんな感じになっているらしい。

 さっとミストフィアから視線をそらしたエルダ伯爵と、彼の肩をつかみながら涙目でミストフィアが何を妄想した! と問い詰めているが絶対にエルダ伯爵は口を割ろうとはしなかった。


 もうこの人たち二人っきりで、夫婦漫才でもやっていればいいんじゃないかという光景を僕は目撃していたが、そこでカイルが、


「花嫁衣裳、か」

「? どうかしたの?」

「いや、可愛いタクミが着たら、それは言葉では表せられない可愛さを醸し出すだろうなと」

「い、今、僕で妄想しなかった?」

「……そのままあられもない格好に……といった事は考えていないから安心しろ。なんとなく似合いそうだなと思っただけだから」

「う、うん」


 冗談だと分かっているけれどドキドキしてしまった僕。

 何でそう思ってしまうのか僕自身よく分からないが。

 そこで砂糖でも今にも吐き出しそうな気持悪そうな顔でメルが僕を見て、


「……もういい、これ以上は突っ込むのはよそう。そしてそこ、リーフィアと楽しそうに談笑している執事、スウィン。お前も兄さん達のこの話が横にそれているのを止めろ」

「いえ、とばっちりは面倒くさいですから私も逃げようかなと」

「……気持ちは分かるが、そもそもこんな無駄なことをやるよりも早くリーフィアの病気を治すのが先だろう?」

「そうでした。ついリーフィア様が目の前にいると思うと、それだけで私としたことが、リーフィア様で頭がいっぱいになってしまいました」

「よし、この中で一番しっかりしているであろう僕が、取り仕切ってやる。まずは、タクミ!」


 そこで僕がメルに名前を呼ばれて、それから再びリーフィアのステータスから薬の作り方を確認して、ミストフィアに、


「手に入りそうになかったもう一つは見つかったのですか?」 

「ああ、タクミの“鑑定スキル”で示された場所に向かってすぐに見つかったそうだ」

「よし、後は薬を作るだけです。リーフィア、屋敷に帰ろう!」


 といった話をメルがしているとそこでスウィンが、


「作り方には、この屋敷にある鍋“ナナカマドナ”が必要だったはずですが、そちらは読んでいらっしゃらないのですか?」

「え?」


 メルが慌てたように、薬の作り方を見て……それから、このエルダ伯爵の屋敷で、薬を作ることになったのだった。


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