第4話(この世界のモフモフ事情にて)
荷台って、結構、ガタガタ揺れて車酔いすると僕はくらくらする頭の中で思った。
どうにか町までは耐えたけれど、
「おい、タクミ、大丈夫か!」
「無理ぽ……」
目の前が光り輝く世界が広がっている。
意識がもうろうとする僕の体がふわりと浮かび、馬車から降りていくな~とぼんやり思った。
そこでカイルが送ってくれた荷馬車のおじさんに何かを貰っていて、
「ありがとうございます」
「いやいや、お大事に」
といった話をしている。
それからすぐそばにあったベンチに僕は座らせられて、
「タクミ、口を開けろ」
と言われたので僕は口を開けると何かが口の中に放り込まれる。
ふわりと、爽やかなミントのような香りがして、段々に意識が覚醒していく。
「……もぎゅ、ご、ごめん、僕……」
「いや、ああいった馬車は酔いが激しいから、よくある。でも大丈夫そうでよかった」
「ごくん。ありがとう。でも、今のは?」
「酔い覚ましの“レトの葉”だ。菓子にもよく使われる、そこら辺にも生えている薬草……というよりは雑草に近い植物だ」
「そうなんだ。荷馬車のおじさんがくれたのかな」
「そうだ。タクミが可愛いからかもな」
「……可愛い……僕、格好いいって言われたい」
可愛いという言葉にコンプレックスのある僕は、そう呟くとカイルに小さく笑われてしまった。
酷いと思ったものの、こうやって連れてきてくれているだけでもありがたいので僕は黙った。と、
「どうする? 先に何かを食べていくか? お昼にはまだ早いが……それとも先にギルドに行くか?」
「ギルドがいい。僕の力を早く知りたいよ。なんとなくこの世界って魔物とかもいそうだし」
「ああそうだな。魔物もいるから、能力を知った方が良さそうだ。でないと戦えないが……」
そこでカイルが僕を上から下まで見た。
じろじろと見られて品定めをされている気もしたが、そこでカイルが、
「タクミは何か武術の経験は?」
「特にないです」
「……後で素人でも扱えそうな武器を探そう。魔法使いとしての才能が高ければ問題ないしな。簡単な魔法は短い呪文と杖があれば誰でも使えるし」
「僕、魔法使いデビューだ!」
そう思うとそれはそれで魅力的だ。
ゲームなどを見て一度でいいから魔法を使ってみたいと思った人間は、そこそこいるだろうし、その中の一人が僕だ。
楽しみだと思って歩いていくとそこで、犬耳の少年が、家庭用のペットの犬のようなものを抱きしめて幸せそうにしている。
この世界には獣人以外にもペットの犬がいるのか……と僕は見ていると、
「仲睦まじい恋人同士だな」
「え?」
「……ああ、俺達は、ああいった小型の動物に変身できるんだ。“獣化”と言ってその昔は戦闘能力強化の意味もあったが平和な時代が続いたせいか、段々に能力が退化して今は、あれくらいの大きさの動物になって恋人にモフモフ撫でられるのが主流になっている」
「そうなんだ……カイルもあんな感じになるのかな?」
「いや、俺は古い時代の能力を残しているのもあって、“獣化”すると大きくなるからタクミには抱きしめられないな」
「そうなんだ、残念」
僕も小さなモフモフになったカイルを抱きしめられたらなと思ったけれど無理らしい。
残念だなと思っているとそこで大きな赤いレンガの建物が見えてくる。
「ここが冒険者ギルドだ」
「そうなんだ……あ、文字が読める」
「そうなのか? よかった。名前は書けそうか?」
「だ、ダメなら教えて欲しい」
「分かった」
そうカイルと話しながらその、少しだけ楽しみだった冒険者ギルドの入り口をくぐる。
中は食堂というか酒場のようになっていてそこで、
「お前のようなお子様が、この冒険者ギルドに何の用だ!」
そう、僕と同じ背丈で同い年ぐらいの猫耳美少年に僕は、喧嘩を売られたのだった。
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