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第48話(それ以上何も言えないようで)

 こうして僕達は、リーフィアの様子を集団で見に行くことになったのですが、ミストフィアの手をエルダ伯爵が握るとミストフィアが焦ったように、


「な、なんでこんな」

「恋人同士だから構わないでしょう?」

「う、うぐ……うう」


 ミストフィアが呻いて、恥ずかしかったらしく顔を下に向けるように猫耳が垂れている。

 く、男なのに生の獣耳が……と思いつつ、カイルの耳を見ると、表情は普通だが狼耳が嬉しそうに動いていて尻尾もそこはかとなく揺れている。

 何だろう、いつまでも見ていたいような触れたいような。


 と、それに気づいた僕にカイルが、


「どうした? タクミ」

「え、えっと、カイルの耳が動いていて可愛いから触りたいなって」


 だがその僕の言葉で皆が動きを止めて、じっと僕を見ている。

 僕達の目の前で手を繋いでいるミストフィアとエルダ伯爵まで、僕を真顔で見ている。

 僕は首をかしげているとそこで案内をしているスウィンが、


「少々前から気になっていたのですが、お二人は恋人同士なのですか?」

「? 違います。それがどうかしたのですか?」

「……なるほど」


 何がなるほどなのかは分からないが、納得されてしまった。

 さて、こうして僕達はリーフィアのいる部屋にやってくる。

 こんこんと叩いてからスウィンが、


「リーフィア様、スウィンです。皆さまをお連れしました」

「はーい」


 明るいリーフィアの声がして、スウィンが部屋のドアを開くとふわりと花の香りがした。

 見ると部屋の端のように白いユリのような花が飾られている。

 甘く優しい香り。


 そう僕が思っているとリーフィアがベッドから起き上がり、


「ミストフィア兄様はその様子だと、無事くっついたいみたいだね」

「リ、リーフィア」

「スウィンから色々話を聞いていたから協力したのだけれど、上手くいったみたいだね」

「な、べ、別に僕は……」

「だって前から兄様、エルダ伯爵が来るとなると身だしなみをいつも以上に気にしていたりそわそわしていたし。そして会った後はしょげていたし」

「……」


 ミストフィアはそれ以上何も言えないようで、沈黙した。

 どうやらこの三兄弟の中で一番純真そうに見えて、リーフィアはなかなかの曲者であるらしい。

 そうしているとスウィンが、


「リーフィア様、お加減はいかがですか?」

「今日は楽だよ。やっぱりスウィンの持ってきてくれた癒しの花の香りが効いているのかな?」

「もしそうでしたら手に入れたかいがありました」


 珍しくスウィンが心からのような笑顔を浮かべる。

 そしてそれに嬉しそうに頬を染めるリーフィア。

 こ、これは……と僕が思っていると、そこでその様子を見ていたミストフィアがエルダ伯爵に、


「そういえばこのスウィンは何者だ? 僕は会ったことが無いぞ!」

「彼は父の……俺の母が俺を生んですぐに亡くなった後に、一時期お世話をしに来てくれていた乳母の息子です。彼の母親自体が俺にとっては育ての母だったのですが、それで父とそういった関係に弟が生まれ、それがスウィンなのです」

「だが屋敷では見かけなかったぞ」

「ええ、その乳母だった彼女は、亡くなった俺の母が命の恩人であったらしく、後継者争いに参加したくないとの事で、秘匿されたままでしたから。もっとも育ての母という事もあり俺もよくスウィンの家に出入りしていて、兄弟仲は良かったのですよ」


 そう告げたエルダ伯爵にスウィンが、


「兄さんが言う通りです。ですが今回の件は、兄さんのあまりの不甲斐なさに私もそろそろ協力しないと何かしでかしそうだと思いまして、このような形になりました」

「……スウィン」

「兄さんが監禁部屋の作り方を調べ始めた時は、なんで一人でこじれているのだろうと思いましたが、結果的に私もリーフィア様に出会えてよかったと思います」


 どうやらエルダ伯爵が新たにやらかしそうになっていたので、スウィンが止めに入り、屋敷に潜入してリーフィアと恋に落ちたらしい。

 出会いはどこに転がっているか分からないものだと思いながら、そこはかとなく顔を青くしているミストフィアとエルダ伯爵を僕は見たのだった。


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