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第47話(どうやらこの勝負は)

 こうしてカイルと一緒に居られて嬉しいなと思っていた僕は、何かを忘れているような気がした。

 何だったっけ、と思って僕は思い出した。


「そういえば異世界から召喚された異世界人て、王族に気に入られやすいらしいんだけれど、僕、無事元の世界に帰してもらえるのかな?」


 その問いかけに抱きついていたカイルの僕の頭を撫でる手が少し止まってから、


「……ああ、それは心配しなくていい」

「でも出会った瞬間に一目惚れされるらしいんだけど、それでも帰して貰えるのかな?」

「……大丈夫だろう」


 カイルの声がどことなく弱々しい。

 しかもカイルの尻尾が気落ちしたように垂れている。

 更にカイルの後ろにいるミストフィアの表情が、嘘をつけと言っている顔な気がする。


 どうやら僕は疑心暗鬼になっているらしい。

 でも元の世界に戻れたとして、


「でも元の世界に戻ったらもうカイル達と会えないのかな?」

「それなら、望めばいつでも行ったり来たり出来るぞ。タクミが望むなら」

「本当! じゃあお城に行った後もカイルと一緒に居たりできるんだね!」


 僕が嬉しくなりながらそう答えると、カイルも嬉しそうに尻尾を揺らす。

 僕と二度と会えないと思ってカイルも悲しかったのだろう。

 そして僕も、カイルとは僕が望んだ時に会えるのならそれでいいなと思った。


 そこでミストフィアが、執事をやっていたスウィンに食って掛かった。


「お前、スウィン。よくも僕の弟のリーフィアを……」

「ちなみにミストフィア様と兄のエルダ伯爵のこじれ具合について、リーフィア様にお話ししましたら、快く協力して頂けました」

「……」


 沈黙するミストフィア。

 どうやらリーフィアは、自分からついてきていたらしい。

 そこでエルダ伯爵がミストフィアに、


「そもそもミストフィアが素直に俺に屈していれば良かったのに。強情を張るからこのような手段を取らざる負えなかったではないですか」

「な! そ、そもそも、こんな回りくどく脅すような金で縛ろうとするような行動をして……これだから成金は、と陰口を叩かれていたのを知らないのですか!?」

「……まさかそれが理由で?」

「……別にそういうわけでは。そ、そもそも感情をお金という対価で支払うのが間違っているからであって……だ、大体、もう少し普通に口説いて僕の信頼を得ようとは思わなかったのか!?」

「今までの経験上、その方法では普通に皮肉の応酬になると俺は分かっていましたからね。思い当りませんか?」

「なるほど」


 そこでミストフィアは納得してしまったらしい。

 この息の合った会話に、この二人の関係は何故ここまでこじれたのかという気が僕はしないでもなかったがそこで、


「だ、だが、もう少し穏便に僕を口説くとか、そういった事は考えなかったのか?!」

「考えて諦めました。どんな手段を取ろうとも、ミストフィアが手に入ればそれでいいと俺は思っただけです」

「う、うぐ。でも、普通の口説き方でも……」

「北風と太陽の話をミストフィアは知らないのですか? 風は服を吹き飛ばして脱がせたけれど、太陽は暑くしたら布を体に巻いてしまった。つまり、ごり押しでもいいので奪ってしまえば勝利なのです」


 言い切ったエルダ伯爵に、僕の知っている話と違う! とその寓話について僕が思ったのはいいとして、ミストフィアが悔しそうにエルダ伯爵を睨み付け、


「く、認めてやろう、僕もお前が好きだと。そしてお前も僕が好きなんだろう!」

「はい」

「……」


 エルダ伯爵が微笑みながらうな頷いた処でミストフィアは、それ以上何も言えなくなったようだった。

 どうやらこの勝負は、エルダ伯爵の勝ちであるらしい。

 そこで経緯を見守り、全てがどうでも良くなったようなメルが、


「そういえば、リーフィアの様子を知りたいから案内してほしい、スウィン」


 そう、メルがスウィンにお願いしたのだった。

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