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第45話(猫耳カチューシャがスポッと僕の頭から外れた)

 変な顔になったメルが、正解といったエルダ伯爵を見て、次に僕を見て、


「今幻聴が聞こえた気がするし、タクミも変なことを言っていた気がする」

「いや、多分気のせいじゃなくて、ミストフィアがそこにいるエルダ伯爵が好きなのだと思う」


 僕がそう告げると、変な顔のままのメルが、


「でも昔から皮肉の応酬で、お互いに取っ組み合いの喧嘩はするわ、次は倒してやるとか今日は勝利したとか、楽しそうに兄さんが言って……でもそういえば風邪の時はお見舞いに行ったりしていたな。ライバルの無様な姿は見たくないとか言って。そしてそこにいる鬼畜エルダ伯爵は、無様な姿を見に来ましたと言って、兄さんの大好物の“マルーンの実”を持ってきて……ん? 何で仲が悪いのに、お見舞いに……」


 口に出して色々と考えてメルは呆然としたように天井を見上げた。

 次にメルはエルダ伯爵に、


「それで僕達を誘拐してどうするつもりだと?」

「俺はミストフィアが欲しいのです。ミストフィアには拒まれ、ですが公爵家の長男という立場上、手にはいらないのが気に入りませんでしたが、ならば別の手段を講じるまでと思っただけです。最も全て失敗して貴方を誘拐する方法しか残されていませんでしたが」

「僕を誘拐してどうする気だ」

「貴方の身柄と引き換えに、嫁に来ていただこうかと。今回はリーフィアも連れて来ましたし」

「そうだ、リーフィアはまさか僕達のような部屋に転がされて……」

「いえ、ベッドで眠って頂いています。本当は貴方方もそうする予定だったのですが、急な商談で客室が空いておらず、今、用意をしている最中なのですよ」


 肩をすくめるエルダ伯爵。

 一応は今の話を聞いている範囲では、僕達は大丈夫そうだ。

 危険なことにならなくて良かったと思うと同時に、これからどうしようかと考えていると……ぽとん、と何かが僕の頭に落ちてきた。


 実は僕は虫が苦手なのだけれど、今なにか小さいものが落ちてきた。


「あ、頭に何かが」

「蜘蛛みたいだね。あ、耳の方を歩いてる」

「と、取って、メル」


 僕がメルにお願いすると、メルがしかたがないなと言って僕の偽猫耳に触れる。

 ちょっと力の加減を誤ったのか猫耳カチューシャがスポッと僕の頭から外れた。 

 すぐに蜘蛛を払い、メルは僕の猫耳カチューシャを戻し、


「よし、これで大丈夫」

「ありがとう、メル……あれ?」

 

 そこで僕は真顔になって僕を見つめるエルダ伯爵とスウィンに気づいた。

 食い入るように僕を見つめているエルダ伯爵が、


「スウィン、今、メルでない方の人物の猫耳が取れた気がしたが」

「はい兄様、耳が取れました」


 そこで沈黙して、スウィンが僕の前にやってくる。


「え?」

「少し確認させて頂きます」

「ふぎゃああああ」


 そこで僕は胸を触られる。

 何でこの世界の人は性別確認に僕の胸を触るんだと思って涙目になっていると、スウィンが離れていった。


「胸がないので、女の子ではないようです」

「……」


 エルダ伯爵の顔色がさっと青くなった。


「……まさか、お前は銀狼の国フェンリルが召喚した“神子”か?」

「え、えっと、そうらしいです?」

「な、何てことだ、計画が狂う! そもそも異世界人はあの国の王族に愛されやすい性質があて、手を出したなら恐ろしい制裁が過去に何度も……スウィン、急いでこの異世界人だけ屋敷に戻すぞ!」


 僕は新たな情報を得つつ、無事元の世界に戻してもらえるのかさらに不安に思っていたがそこで、爆音とともに屋敷が振動するのを感じたのだった。


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