第44話(金、権力に用はない)
扉の鍵が開かれて、現れたのは一度見たエルダ伯爵という人物とそして、執事のスウィンだった。
スウィンを見て、メルは唸り声を上げながら、
「このっ、僕達を誘拐してどうするつもりだ、お前達!」
「……相変わらずこのような状況になっても、元気がいいですね、メル様は。リーフィア様とは大違いです」
「リーフィアや、ミストフィア兄様はどうした!」
「リーフィア様はこのお屋敷で、おもてなしをさせて頂いています。体が弱いのですから」
「……変な手出しをしていないならそれでいい、それでミストフィア兄様はどうした!」
そう叫ぶメルだけれど、それに答えたのはエルダ伯爵だった。
「ミストフィアは、縄で縛り上げて、お前の屋敷にそのまま使用人とは別の部屋に転がしておいた。少しは考える時間が欲しいだろうからな」
「なんだと? 何が目的だ!」
「何が目的、ね、何だと思いますか? 簡単に連れさらわれた、元気のいい次男君?」
何処か楽しそうにメルを呼び、質問を質問で返す。
それを聞きながらメルが、
「お前のそういう意地の悪い性格が、嫌いだ。僕も兄様も」
「そうですか。それで、他に聞きたいことはありますか? 俺も忙しいので、次は昼食の頃に来ます。その時までに質問は考えておいてください」
「! ま、待て。そ、そうだ、スウィンはお前の仲間なのか?」
「異母兄弟です。昔から仲の良い彼に頼んで、俺の手助けをしてもらうために貴方がたの屋敷に送り込みました」
「そんな……すごく親切だったのに」
そこでスウィンが深々と息を吐き、
「メル様は人を信用しすぎです。ですが、私にもあの屋敷にいることで、“欲しいもの”が出来ました。そのために今私は、兄に協力しているのです。利害も一致していますから」
そう告げたスウィン。
欲しいもの、そしてこのエルダ伯爵と利害が一致しているもの、それはなんだろう、そしてメルを攫う意味についても考えるが、僕としては答えが出ない。
「……僕が関係ないとすると、メルを誘拐した理由が今の話に関係している……なんだろう」
「おや、そちらの子はメルと違って賢いですね。この場で感情的にならず、俺に質問する方向に行くのですから。そうですね、それは正解です」
遠回しにメルを馬鹿にしているような発言にメルはそのエルダ伯爵を睨みながら、
「僕の家、公爵家の地位が目的か?」
「公爵家の地位? あんなカビの生えた歴史の遺物で古い人間がありがたがっているようなものに全く興味はありません。」
「……そうなると僕の家の宝物か?」
「宝物? ミストフィアはそれが薬草の交換条件でどうだと言っていましたが、生憎俺は古物を収集する趣味は何もないので、お断りしました」
「お金、か?」
「あいにく俺には商才がありましたので、お金に関してはあなた方の家以上です。比較になりません」
どうやらお金でも宝物でも地位でもないらしい。
金、権力に用はない、逆に言えば、
「お金と権力でそれは手にはいらないものですか?」
「良い質問です、正解です」
笑うエルダ伯爵に僕は嫌な予感がして、変な顔になる。
そもそも、一瞬だけ別荘に行く前にミストフィアがエルダ伯爵に見せたあの表情について考えると、さらに嫌な予感が膨れ上がった。
スウィンからも内密にといって、そういえば話されていた情報もあって。
しかもここは男同士がよくある世界である。
そこでメルが僕に、
「タクミ、何か分かったのか?」
「いや、分かったような分からないような……」
「なんでも良い、あいつから情報を引き出せ」
エルダ伯爵を指差すメル。
それに僕は小さめな声で、
「エルダ伯爵はミストフィアが好きなんだ。だから手に入れたくて、こんな脅しのために僕達を捕まえたんだ」
「正解です」
僕の答えにエルダ伯爵が正解と言い、メルが変な顔になったのだった。
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