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第43話(風が気持ちが良いな)

 揺さぶられる。

 しかしこの眠りのよな微睡みから我を目覚め刺そうとするのは何者だ……にゃぁ~、と僕は思った。


「我が眠……りを妨げし……者には罰……」

「寝ぼけている場合じゃないよ! タクミ! 起きて!」


 そこで僕はメルに体を揺さぶられる。

 その焦っている様子に何だよぅ、と僕が思って目を開けると、そこは窓のない部屋だった。

 そして下に敷物が敷かれているが、殺風景な部屋である。


 少なくとも僕はこんな場所に来た覚えがない。


「何で僕ここにいるんだろう……! そうだ、確かメルの屋敷の執事のスウィンがメルを気絶させて、でも様子がおかしかったからメルを返してくれと言ったら渡してくれたんだけれど、そのまま僕も気絶させられたんだった!」

「説明をありがとう、タクミ。なるほど……あのスウィンという執事が裏切ったのか。ほうほう」


 メルがやけに機嫌が悪そうにそう呟く。

 だが、裏切ったとして、


「僕達を、というかメルを捕まえてどうする気だろう?」

「分からない。だが以前僕を捉えようとしていた人間がいたから……仲間なんだろうな、あの執事のスウィンも」

「あの執事の人は昔からいるの?」

「いや、最近雇った人間だ。以前いた執事が年齢できつくなってしまった、新しい人を雇ったんだ」

「それで入り込まれたと……でも、何が目的なんだろう? 思い当たるフシはある?」

「僕としては身代金目当ての誘拐、僕の公爵家としての価値からすると、欲しい宝物があるとか要求を飲ませたいとか……。思い当たりすぎて何も分からない」

「そうなんだ。となると僕はとばっちり?」

「うん」

「良かった、特殊能力チート狙いじゃなくて」


 もしそうならそれ用の防御がなされているはずなのだ。

 だから僕達は拘束されていないのかもしれない、と思ったが僕の“鑑定スキル”は攻撃系ではない。

 なので逃げ出さないだろうというのがあったのかもしれない。

 

 となると、


「メル、ここの壁は壊せないのかな?」

「さっきやってみたが、防御の魔法が強すぎて傷一つつかない」

「じゃあ僕に魔法を教えてよ。魔力だけは沢山有るみたいだし」

「……そんな一朝一夕で魔法が使えるようになったら苦労はしないけれど、試してみるか」


 というわけで僕はメルに魔法を教えてもらう。


「“炎の矢(ファイヤー・アロー)”」


 まずは簡単な魔法として教えてもらったその魔法。

 目的に向かって指をさし(今の場合は部屋の壁だ)、魔法を使う。

 この壁が壊せるくらいが良いな~、とぼくは思った。


 思っただけだった。

 すると目の前に僕の身長よりも直径が大きい火の玉が現れて、その壁に飛んで行く。

 あまりのことにメルすらも茫然となったが、そんな僕の前で火の玉は壁を轟音を立てて壊して大穴を開けた。


 そこからは暗い夜空が見える。

 今日も雲のあまりない夜だったのは良いとして。


「え、えっと、とりあえずはここが何階くらいなのかを見たほうが良いかな?」

「そうだ。うん、そうしよう。……風が気持ちが良いな。高い所みたいに」


 吹き込んでくる。

 その強さを感じながら恐る恐る穴から下を覗くと、とても高いことが分かった。

 目眩がするほどに。


 だから僕はメルに、


「空をとぶ魔法ってメルは使える?」

「……風系は制御が難しくて苦手なんだ」

「そうなんだ……というかよくよく考えたら扉の方を壊せばよかったね。建物の廊下に繋がっているだろうし」

「確かに」

「……もう一回行く?」

「……やっておしまいなさい、タクミ」


 というメルの後押しもあって、扉に向かって魔法を僕は再度使おうとしたのだけれど、そこで、この部屋の扉の鍵が高い音を立てて開かれたのだった。

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