第42話(そのまま奪ってしまっても良いのでは?)
静かな屋敷に入っていったカイルとレイト。
先ほどタクミの力で確認し他場所に向かう。
人数が少ないので一つの階ごとに見る必要が無いのは好都合だった。ただ、
「幾つかの場所で人が集まっているように見えましたね」
「そうだな。ただ、自由に動き回れるかどうかは別だが」
「ですね。さて、カイル様は一応は私の後ろでお願い致しますね」
そう告げたレイトにカイルが言い返そうとするが、
「よろしいのですか? あまり我儘を仰るなら、私も私一人だけではカイル様をお守りできないと判断しますが」
「……すぐに呼べる道具も用意済みか」
「もちろんです。あ、転移して逃げようとしたなら、タクミ様だけ先に城に連れて行って、それなりの“教育”を施すことになりますが」
「……タクミは元の世界に戻す」
「それがそういうわけにもいかないのです。今回の召喚には、この世界の“神子”を召喚する意味合いもありますので」
それを聞いたカイルが眉を寄せる。
「そんな話、俺は聞いていないぞ。だがそういえば最近、これまでに見たことのない大地の律動や空の輝きがあったと聞くが……」
「その変化への対抗も兼ねているのです。ですのでそう簡単にはタクミを元の世界に戻せませんね」
「……だが、約束はした」
「そうなればカイル様が一緒に行ってあげるべきですね。タクミと約束したのは、カイル様なのですから。その状態を維持したいのであれば、御身をもう少し大事にしていただけると私としても嬉しいですね。……こう言ってはなんですが、無事カイル様に、無傷の状態で私は出会えて安堵しているのですよ。あの書き置きを見た瞬間の焦燥感はいまだに忘れられません」
そう告げた目の前のレイトに、カイルは今更ながらこの乳兄弟で幼馴染のレイトが、自身をとても心配していたのだと気づいた。
あまりにもいつも通りだったので気付かなかったが。
レイトの方が世間慣れしているのだろうとカイルは思いながらも、
「だが俺は、あんなに連日相手を探せと言われるのに辟易してしまった」
「そうですね。おかげでそれも兼ねて、“神子”兼“恋人”召喚という形になりましたからね。召喚がそんなに簡単にできないのもあり、そういった形になりましたが、やはり異世界からの転移者の能力は凄まじいですね」
「しかも自覚がないしな。タクミは……俺が側にいないと」
「そのまま奪ってしまっても良いのでは?」
「……」
黙ってしまったカイルを見ながらレイトは、相変わらずカイルは“優しい”と思う。
本人は否定するが、幼馴染として昔から見ているのだから間違いないというのに。
ただ本人の前でそれを言うととても嫌そうな顔をされるので、言わないが。
そうしているうちにある部屋にやってくる。
ドアからカイルを離れさせてレイトがそっとドアノブに触れる。
ここには魔法の気配はない。
ドアを開けると中には縛られた男達が数名。
予想内の状況を確認してから縄をほどいていく。
それから他の階も見て回り縄で縛られた使用人を助けだす。
全員が何か飲み物を飲んで、眠らされてしまったらしい。
最後にやってきたのはミストフィアの部屋だった。
カイルがその部屋にたどり着いて、
「ここで全部か?」
「そうですね。特に罠らしい罠もなく、何のつもりでこんなことをしたのか。……ここも大丈夫そうなので開きます」
そう言ってレイトがドアを開くとそこに転がっていたのは、ミストフィアだった。
カイル達を見るとムームー言って騒いでいる。
よく見ると魔力が封じられているようだった。
とりあえずは、その縄や猿ぐつわを取ると、ミストフィアが、
「スウィン、あいつは何処ですか! あいつが、僕を裏切ったんだ!」
そう叫んだのだった。
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