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第41話(仕方がありませんね)

 屋敷の様子がおかしい。

 確かにこの夕暮れ時にはもう明かりがついていないとおかしいくらいに薄暗い。

 そしてカイルの言葉にメルも何かを感じ取ったらしく、


「兄さん! リーフィア!」


 名前を呼んで、走りだそうとするメルを、レイトが尻尾を掴んで引き止めた。


「ふぎゃあっ!」

「メル、貴方はここで待っていなさい」

「で、でも……」

「むやみに屋敷に入るのは今は危険です。安全が確認出来次第、メルを呼びます。そして……もしも私が戻ってこなければ、助けを外部に求めてください」

「! そ、それは……」

「分かりましたね?」


 レイトに言われてメルは、不安そうに見上げながらも渋々といったように頷いた。

 そこで誰かが走ってくる音がする。

 たたったと、こちらに向かって土を踏みしめる音。


 よく見ると馬車が遠くの方に停まっていた。

 そこからこちらに焦ったように走ってくるのは、ここの屋敷の執事、スウィンだった。


「皆様、お戻りになられたのですか」


 顔見知りの人物の登場に、メルが安堵したように、


「スウィン、何処に行っていた?」

「ミストフィア様のご命令で、使用人も含めた一同でリーフィア様の薬の材料を探しに向かったのですが……」

「でも使用人全員ではないのだろう? 兄様達は……屋敷に明かりもついていないしおかしいんだ」

「はい、数名の使用人と、ミストフィア様、リーフィア様はまだ屋敷に残っていたはずですが……確かに妙ですね。誰か応援を呼んだほうが良さそうです。メル様は、私達の馬車で避難を」

「いやだ、レイト達と一緒じゃないと……」

「メル様……執事である私をあまり困らせないでください」


 そう告げるスウィンに、そこでレイトが、


「では私が中を見てきましょう。こう見えても魔法騎士団の副団長ですから、そう簡単には倒されません」

「ですがお客様にそのような……」


 スウィンは困ったように答えるも、そこでカイルが、


「では俺も行くとしよう」


 それに慌てたのはレイトだった。


「……カイルさ……来なくて結構です」

「レイトを何度か負かしたことのある俺に、余裕だな」

「ですが……」

「では俺が勝手に行く、スウィンだったか。タクミとメルを頼む」


 そう告げるとスウィンは、少し考えてから頷いた。

 僕は大丈夫だろうかと思いつつ、


「ま、待って、屋敷に“鑑定スキル”を使って外の廊下から部屋に誰かがいるか分かるように出来るか、やってみる!」

「それは便利だな。タクミ、お願いする」


 カイルの答えを聞いて僕は“鑑定スキル”を使う。

 屋敷の外からも見える印が浮かんでいて、中にいるのは見た範囲で5人もいないようだった。

 そしてカイル達が屋敷の中に入っている。

 

 大丈夫だろうかと思っているとスウィンがそこで、


「メル様、風邪を引いてしまいますから、馬車の中に待機していては」

「……だったら今戻ってきた馬車に僕は乗る。ここの方が屋敷に近い」

「あちらに用意した私どもの馬車には乗っていただけませんか?」

「そう言ってここは危険だからといって僕を隔離する気だろう」

「……乗って頂けませんか。仕方がありませんね」


 そう言ってスウィンがメルに近づいてき、何かの危険を察して逃げようとしたメルの腕を掴んだかと思うと首に手刀を入れる。

 ふらりと倒れこんでしまうメルを支えたスウィン。

 けれどその表情が気になる。

 

 どこか思いつめたような目をしている。

 メルを保護するような人間の顔ではない……嫌な予感がして僕は、


「メルを返してください。でないと大声を出します」

「……仕方がありませんね」


 そう僕が告げるとスウィンは僕に、抱えていたメルを渡す。

 結構重いが、どうやら僕の杞憂だったようだ。

 僕の勘もあてにならないなと見上げると、そこでは何時にもまして無表情で、冷たい瞳をしたスウィンが立っていた。


 そこでスウィンが手を上げて、


「え?」


 疑問符を浮かべている間に僕は、首に衝撃を感じてそのまま意識は闇の中に沈んでしまったのだった。

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