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第39話(スライムにも好みがあるらしいから)

 僕に襲いかかったスライムを振り落とすように手を大きく動かして、慌てて僕は逃げる。

 目的の場所は近いのに何でこんな、と思っているとメルの悲鳴が聞こえる。

 振り向くと、メルにスライムが襲いかかっていて慌てたようにレイトが引き剥がそうとしている。


 だがここで僕は気づいた。


「な、何でカイルとレイトは襲われないんだ! ひあああっ」

「……とても言い難いが、タクミとメルはスライムから見て“美味しそう”なのだと思う。スライムにも好みがあるらしいから」

「そんな! って、うわぁああああ」


 そこで僕とメルは大量のスライムに襲われる。

 すぐさま僕をカイルが助けようとするけれど、もう僕がこんな場所に一秒もいたくなかった。

 なので、カイルが今現在僕から引き剥がして後ろの方に投げているのを見ながら、


「カイル、早く“マタタビ森草”を!」

「僕、こんな場所に居たくな、ふああああっ」


 そこでもぞもぞとスライムが動いて服を溶かしていく。

 何で僕がとか、女の子に起こったら嬉しいイベントがと涙ながらに思う。

 慌てたように近づこうとするカイルに僕は、


「早く行って! 僕、もうこんなのやだっ」

「あ、ああ……」


 とりあえずスライムに敏感な肌を吸われたりしているこの状況だけは、絶対に嫌だった。

 メルもどうやらレイトに同じようなお願いをしたらしい。

 カイルとレイトが去っていくのを見送りながら僕達といえば、


「こ、この、スライムがっ、やぁああっ」

「やめれっ……ぁあああっ」


 どうして僕がこんな目に、なんて考えている余裕もないくらいに、次々とスライムが現れて僕に触れてから去っていく。

 どうやら肌に触れて、魔力を吸ってお腹いっぱいになってから逃げていくらしい。

 先ほどから偽猫耳の部分は口にしないでくれているので助かってはいるのだが、そろそろ喘ぎ疲れて何も考えられない。


 そこで誰かが僕達の方に戻ってきて、スライムを打ち払った。


「大丈夫か? タクミ」

「ふえぇ、え?」

「……スライムには少量の媚薬の効果があるから、それで感覚が麻痺しているのか」


 カイルらしい声が聞こえるが何を言っているのかよく聞こえない。

 そう思っていると、唇に熱を感じる。

 それが気持ちよくて暫くぼんやりしていると、急に意識と感覚が冴えてきた。


「! んんっ」


 そこで僕はようやくカイルに唇と唇を重ねるキスをされていたのに気づく。

 な、何でと思いながらも今度はカイルにキスされているんだな~、とぼんやりしてきてしまう。

 そのまま僕は、ふっと意識を手放してしまったのだった。







 気を失ったタクミをカイルは抱き上げる。

 スライムに服の殆どを溶かされて目に毒だが、そこそこまだ自制心が残っていたカイルは自分の上着を着せてタクミを抱き上げた。

 戻ってきた頃にはタクミに襲いかかるスライムも少なくなっていたので、追い払えたのは良かったが、媚薬の効きが良いタクミを見ていてついムラっと……では無く解毒のために、そう、解毒のために仕方がなくキスをして魔力を口移しで解除したのだ。


 楽になったのかすぐにタクミは気を失ってしまった。と、


「そちらもですか。メルも気絶してしまいました。こんな風に無防備にされるのは少しきついですね」

「そうだな」

「おや? 否定なさらないのですか?」

「……行くぞ。目的のものは見つけたからな」


 カイルはレイトにそう答え、それ以上はレイトは何も言わず屋敷に戻ったのだった。

 

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