第37話(これなら見落としがなくて便利でいい)
“マタタビ森草”を探しに僕達は森の中に入っていく。
時期が良いのもあるのか、涼しい風が吹いて心地よい。
それもほんのり森の香りがする。
今日は空も晴れていて青空が広がっているのもとても良い。
良い日に探しにこれたなと思いながら森の小径を歩いて行くと、そこでカイルに、
「随分と楽しそうだな」
「うん、何だか森の中を皆で歩くと楽しい気がする」
「そうか。俺はタクミと一緒に歩いているのは楽しいな。折角だから手を繋がないか? 道に迷うかもしれないし」
「この一本道で迷わない気がするけれど……いいよ」
そう答えて僕は、カイルと手を繋ぐ。
カイルの手は大きくて温かい。
それが心地良と思うのは、どうしてだろう?
カイルと一緒にいると僕は酷く安心してしまう。
どうしてだろう、そう思ってカイルを見上げると、カイルが微笑み、
「どうした?」
「な、なんでもない」
「そうか」
僕は慌てて顔を背けた。
何となくカイルの顔をじっと見ていると変な気分になるから。
理由は分からないけれど。
そこでメルが、
「く、見せつけやがって」
「? 何が?」
「いや、ほら……」
「あれ? メルも道に迷わないようにレイトと手を繋いでいるんだ」
「! ち、違う、これは……」
必死でメルが違うと言い張っていたが、レイトがそうですよと答えて、メルが放せと騒いでいた。
もちろんレイトがメルの手を放す筈など無かったのはいいとして。
カイルが立ち止まった。
「随分と沢山の魔物がこちらを狙っているな」
「た、沢山?」
「ああ、小さくてそれほど強い魔物ではないが、こちらを狙っているな。一斉に遅いかかるつもりかもしれない」
「ス、スライム?」
「いや、肉食系の獰猛なタイプだな」
それを聞いて僕は周りを見回して敵がどこにいるのか目を凝らそうとした。
けれど何処にいるのか分からない。
だがそこで僕は思いついた!
「ぼ、僕を中心に半径100メートル以内の敵に設定を限定! “ステータス・オープン”」
そう意識すると周囲に一斉にステータス画面が現れた。
ゆうに20はいるであろうその光景に僕が凍りついていると、カイルは、
「なるほど、これなら見落としがなくて便利でいい。助かったぞ、タクミ」
そう言って頭を撫ぜられて、ようやく僕は安心してしまう。
それからすぐにカイルとレイト、メルまでもが魔法を使ったりして倒してしまう。
レイトは魔法騎士団副団長で騎士とついているだけに、剣の扱いにも長けているようだった。
だがこうしてみると僕だけ役立たずだ。
魔力はあるはずだから後で魔法を教えてもらおうと思った所で、周辺にいる全ての魔物を倒しきったのだった。
意外にこの道は危険らしいということで、早く目的のものを探そうという話になる。
先程よりも早足で歩いて行くと、そこで道が二つに分かれている。
一つは木漏れ日が溢れる、緑の小径。
もう一つは、薄暗い森の中に続く道。
どことなくジメッとしているように感じるその道を見て僕は、
「こっちじゃなくてあっちに行こう」
けれどそれに反対したのはレイトだった。
「それは無理です。“マタタビ森草”は、このジメッとした森の中に生えていますから」
「え?」
「水分の多いそれこそスライムのような物が沢山いる場所でないと恐らくはこの性質だと育たないかも知れません」
「う、うう、こんな暗い場所なんて……そうだ、“鑑定スキル”でこの周辺を鑑定して、“マタタビ森草”を探せないかな?」
レイトの言葉を聞いて、極力この周辺に滞在しないでいられる方法を僕は思いついたのだった。
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