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第2話(この世界の女の子には、獣耳がない)

 この世界の女の子には、獣耳がない。

 目の前の男には、獣の耳と尻尾が生えているのに!


「な、なんてことだ、何で僕はそんな世界に……」

「あー、いや、そうだ、そういえば昔、耳がない異世界人の話を聞いたことがあるな」

「! 本当ですか!」


 僕は目の前の彼に迫り、問いかける。

 僕としてはもしも夢か何かではなくこの世界に飛ばされてしまったのだと考えると、その話はどうしても聞いておかないといけない気がした。

 そこで目の前の狼耳な彼は、


「この世界には女子が少なくて同性が当たり前なんだが、それでも同性同士で生まれにくい王族いて、そういった王族が異世界から“嫁”を召喚するのだそうだ」

「……僕、男」

「……特に異世界の耳なしの男は繁殖能力が高いらしい」


 その時、僕はどんな顔をしていいのかわからなかった。

 だってここは、BL、つまりボーイズラブな世界だったのだ。

 僕、女の子が大好きなのに!


「な、何て世界に僕は呼び出されてしまったんだ」

「あ、いや、でもその召喚主の所に行けば元の世界に戻してくれるかもしれないし」

「なんで!? その前に僕……僕……」

「え、えっと、ああ、でもその場合はきちんと同意を得てからにしないと、そういった薬を使っても子供は出来ないから。それに嫌だといえば別の人間を呼び出すだけだから大丈夫だぞ」

「ほ、本当?」

「本当だ」


 そう彼は優しく僕に微笑んだ。

 一瞬男なのに魅入られてしまったが、多分気のせいだと僕は思った。ただ、


「これから僕、どうしたらいいんだろう。その召喚主の所までここからどれ位移動にかかるのかな?」

「……1月はかかるな」

「そんなに! 何でこんな遠い場所に……」

「あー、それは……」

「それは?」


 そこで目の前の彼は口ごもってから僕を見て、


「多分、ここに飛ばされる時に抵抗したから」

「抵抗……覚えていないけれどそうなのかな?」

「恐らくは。でもそうだな……連れて行ってやろうか? その召喚主の所に」

「いいの?」


 僕はじっと彼を見つめると、彼は何かを必死で抑えるかのように空を仰ぎ見てから、


「どうせ行く宛もなかったし。いいぞ」

「本当! ありがとう」

「……素直に信じるのはよくないぞ。俺が悪い人だったらどうするんだ?」

「え? そ、そうだよね、うん。……えっと……」


 そう言われてしまうと確かにそうなのだが、かといって僕は今一体誰に頼るべきなのだろうかと思う。

 しかも村のような人の住処も見当たらない雄大な森林の中の道。

 こんな場所では人に会えただけでも幸運だ。


 今から彼を無視してどこかに歩いて行ってもいのだけれど、ここの世界がどんな場所なのか全くわからない。

 下手をすると野生生物に……。


「どうした? 顔色が青いぞ? ……冗談だったが怖がらせすぎたか。子供をからかったのはいけなかったか」

「……僕は18歳です。童顔だっただけです」

「お、同い年。これで?」

「……」


 無言でじっと見つめると彼は再び顔を背けて、少しぷるぷるしてから、


「ま、まあいい。それで、名前は?」

「僕はたくみです」

「タクミか。手先が器用そうだ。俺はカイル、よろしく」

「よろしくお願いします」


 僕もカイルにそう答え、手を握る。

 僕よりも大きな手で少し悔しい。と、


「それで、思い出したんだが異世界人にはこの世界に呼び出された時、特殊能力チートが手に入るらしいが、身に覚えがないか?」


 そう彼は僕に問いかけてきたのだった。

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