第26話(新しい可能性があるのであれば)
メルの兄の馬車に乗り込んだ僕達は、メルの兄がちらちらと僕の隣に座るカイルを見ていた。
布で覆い隠しているがやはり気づくものなのだろうか?
と思っていると一度息を吐いてから、僕とカイル、レイトの目の前に座っているメルの兄が、
「改めまして、ご挨拶させていただきます。僕は、ミストフィア・クラウ。猫の国であるエレントのクラウ公爵家の長男です。家出した不出来な弟を“保護”していただきありがとうございます」
「……兄さん、不出来はないと思う」
「書き置き一つで家からいなくなったおかげで、僕達がどれだけ心配したのかメルは分かっているのですか?」
初めは怒ったような強い口調から、段々に優し気な口調に変わりミストフィアはメルに告げる。
それにメルは小さく呻いてから、
「だってずっと家の中じゃないか」
「家の中が安全なんですよ。ただでさえ理由が分からずに、“運”がいいのですから……」
「あ、そうそう、僕の能力が分かったよ、兄さん。未来予知と時空間操作の合成能力、“確率操作(弱)”だって。なんでも最適な未来を選び取っているらしいよ?」
「……どうしていまさらその能力だと分かったのですか? あらゆる手を尽くしてもメルの特殊能力は分からなかったのに」
胡散臭そうにメルを見るミストフィア。
そこでメルが僕を指さして、
「タクミの“鑑定スキル”を使いました」
「“鑑定スキル”は無機物にしか作用しないでしょう。例外は、薬草等の一部の植物ですが……」
「ほ、本当だって! 僕のステータスなんかも、タクミは表示できるんだ!」
「……分かりました。ではタクミさんでしたか。僕とメルのステータスを表示していただけますか?」
全く信用していない目でメルを見ながら、ミストフィアが僕に言う。
メルがちょっとだけ涙目になっていたりするのだが、とりあえず僕は、
「“ステータス・オープン”」
と呟くと同時にピンク色の四角い光の画面があって、やはり下の方がモザイクになっている。
個人情報なので表示されていないのだろう。
そしてその画面をまじまじと見て、ミストフィアは、
「本当にこんなものが。しかも僕達の能力がギルドで調べるよりも詳しく載っている。僕の特殊能力も。……タクミさんでしたか、一つお願いしてもよろしいでしょうか」
「は、はい、何でしょう……」
「僕のもう一人の弟リーフィアのステータスを見ていただけないでしょうか。昔からリーフィアは、謎の病に侵されて体が弱くて、たまたま効いた薬草を使ってどうにか延命をしているのみなのです。ですが最近はその薬草を手に入れるにも一苦労で……お願いできますでしょうか?」
「僕に出来ることでしたら、やってみます」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「ただ僕もこの能力が何処まで出来るのかが分からなくて」
「いえ、構いません。新しい可能性があるのであればそれを試したいのです」
そう告げるミストフィア。
弟思いなメルの兄の様子に僕は、僕に出来る範囲だったら手助けしたいなと思ったのだった。
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