第20話(モフモフの中で眠る)
夜道だが雲一つい空にお月様が輝いていて、そして家の明かりや街灯もそこそこ灯っているから町中はそれほど暗くはなかった。
けれど、町から外れていくにつれて街灯も減り薄暗くなる。
周りが暗くてよく分からないのは、怖いと僕は思う。
そこで僕は、カイルに手を握られた。
「こうすれば、はぐれないだろう?」
「うん」
出会った時も思ったけれど、カイルは僕に優しい。
重なった手に温かみを感じて、僕の中の不安が薄らいでいく。
異世界に来てどうしようと思ったけれど、それでも不安が少なかったのはきっと、ここにきてすぐカイルに出会ったからだ。
カイルにはきちんとそのうちお礼をしないとなと僕は思いながら、カイルに手を引かれて移動する。
そこで僕達の後ろで、ボンッと煙が二つ浮かぶような音がして、茶色い猫が僕達を追い越して走っていく。
どう考えてもメルで、僕はずるいと思った。
そこで風を切る音がして、白鳥が僕達の横をよぎって空高く飛んでいく。と、
「私は上空から、彼らの仲間が追ってきているのか見ます。……タクミが“獣化”出来ないから、カイルもしないのでしょう?」
「……俺は体が大きいから、動きが遅い。だから移動には向かない」
「という事にしておきましょう。では」
そう言って飛んでいくレイテ。
けれどそれを聞いた僕は、足手まといだと気付いてしまったけれど、そこでカイルが、
「レイトのいう事は気にしなくていい。それに俺の“獣化”は少し特殊で、体が大きくなってしまう。短距離の移動ならいいが長距離はあまり好ましくない。だが……」
「だが?」
そこでちらりと僕を見てカイルが、
「もしも緊急事態であれば、“獣化”した俺の背中にタクミを乗せてやる」
「いいの?」
「緊急事態だから、仕方がないからな。でも今はそこまで緊急じゃないからこうして手をつないで走ればいい」
「……うん」
僕は嬉しくなりカイルに頷いた。
だって、カイルはなんだかんだ言って僕を気遣ってくれていて、そして僕と手をつなぎたいらしい。
それが好意の表れのようで嬉しいと思う。
こうして僕達は走って、走って……やがて疲れて歩き始め、それからレイトに追ってきてはいないようですと言われて、道の端で野宿をすることに決めたのだった。
道の端といっても低木が道との境界に生えているために、その先がそう簡単には見通せないような場所になっていた。
そこにカイルが魔法で結界を張る。
水色の光の魔法陣が地面に一瞬輝き、すぐに道からは気づかないような薄い色になる。
「ここの内側になって寝るといい。……だが、タクミは薄着だな。寒くないか?」
「そういえば……」
言われてみると少し肌寒い気がする。
そこでカイルが、
「移動にこそ向いていないが、俺の獣化は毛が多いから温かい。その状態で一緒に寝るか?」
「いいの?」
「構わない」
「ありがとう、カイル!」
そういうとカイルは微笑み、すぐにカイルの体が光って、カイルの体の何倍もの大きさの銀色の狼のようなものになる。
そしてカイルに手招きされて寄りかかると、
「ふかふかモフモフで柔らかくてあったかい」
「そうか、暖かくて眠れそうか?」
「うん」
僕がそう答えると、カイルである狼の目が優しげに細まる。
そこでメルが猫のままちょこんと座って僕達を、どことなく羨ましげに見つめているが、
「メルは代わりに私が今日は抱きしめて寝てあげましょう。体温が高くて暖かいですし」
「……僕を湯たんぽ代わりにするなって……にゃあ」
そこで猫のまま抱きしめられたメルが、レイトに頭をなぜられて心地よさそうに鳴く。
どうやら僕はカイルを独り占めできるようだ、そう思いながら気づけばいろいろあったせいか僕は、すぐに深い眠りへと落ちて行ってしまったのだった。
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