第1話(異世界にて、もふもふ(男)と遭遇する!)
「もーふ、もっふもふ、もふもふ~」
その日僕は、とある獣耳の女の子達が活躍する漫画を購入し、幸せな気持ちになりながら夜道を歩いていた。
人の少ない道で月明かりが綺麗だなと思いながら歩いて行く僕の手には、ちょっとしたお菓子と飲み物、そして今日発売の漫画、それも限定版を手にしたのである!
「事前に予約しておいて良かった。……でも何故かセットでついてきたこの猫耳カチューシャはどうしよう」
そう思いながら僕は手持ちの袋をちらりと見る。
紙袋にはいったそれは、確か白い猫耳カチューシャだった。
彼女がいれば、お願いをしてその猫耳を付けてもらっていた所だったのだろうけれど、そんな相手はいない。
なので僕は二次元の女の子達を見てほのぼのするのだ!
といったように僕は、戦利品を手に機嫌よく歩いていた。
空には丸くて白い満月が輝いていて、星々も小さく瞬いている。
こんな綺麗な夜だから夜空に吸い込まれてしまいそうだ……などと思った僕がいけなかったのかもしれない。
楽しく歩いている内に、ふわりと体に浮遊感を感じた。
「? ええ!」
そのまま僕は空高く高く登っていく。
高度一万メートルは酸素マスクがないと~、と言った雑学が僕の頭で駆け巡り、しかもその“空に落ちていく”速度は更に早くなっていく。
遠くで、ワオーンと、犬の遠吠えのような鳴き声が聞こえた気がした。
そして……僕が覚えているのはそこまでだった。
はっと僕は目を覚ました。
そこには青空が広がっている。
ふわふわとした白い雲が柔らかくて美味しそうだ。
だがそこで僕は疑問を持つ。
「あれ、僕、夜道を一人で歩いていたんだったよね? それで空に落ちていって……犬の鳴き声がして……」
そう僕は呟きながら、起き上がる。
気づいたのは今自分がいるのは土のむき出しの道であること、そして周りが木々に囲まれていることだった。
少なくともアスファルトの道ではない。
「いやいやいや、これじゃ、まるで異世界に呼び出されたみたいじゃないか。それはないな~、ナイナイ、ない~……」
段々と自信がなくなってきた僕は、自分の頬をつねる。
にゅっとしてみるが、痛い気がする。
夢ではないらしい。
「せ、説明役、へるぷみー」
「……何、一人で叫んでいるんだ?」
そこで何者かが背後で声をかけてくる。
もしや説明をしてくれる人! と期待を込めて振り返るとそこにいたのは、獣耳の男だった。
しかもイケメンで僕よりも背が高い。
銀髪に碧眼の男。
灰色の狼耳が似合っているのだが、男なのが残念と僕が思っているとそこで、
「どうして俺をそんなにジロジロ見る。……まさか俺の、追手か?」
「追手!? な、何をしたのですか?!」
「……その様子だと違うみたいだな。というか、どうしてこんな所に女が一人でいるんだ? 危ないじゃないか」
と、彼は言う。だが、
「ぼ、僕は男です。女じゃないです!」
「え、そうなのか? となるとまさか……異世界人か?」
「異世界人? ……僕、やっぱり異世界に来たのですか?」
「いや、俺に聞かれても。本当に男ならそうだろう。この世界で、獣耳がないのは女だけだったし」
そんな、獣耳大好きな僕にとって、ある意味衝撃的なことを彼は告げたのだった。
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