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第17話(お前もこちら側に来てしまったようだな)

 町の入り口付近で、荷馬車のおじさんの僕達は降ろしてもらう。

 それから手を振りその荷馬車を見送った後、少し早いが宿を取り夕食を食べようという話に。


「ここは以前来たことがりますので、安くて良質な宿を知っています」


 というレイトの提案からその宿に案内してもらうことになった。

 ちょうど空いている時期だったらしく、4人部屋を僕達は手に入れた。

 前払いの宿だったので一晩分の料金を支払い、鍵を貰う。


 それから少ない荷物を置いて、僕達は食事に向かった。

 ここは野菜の美味しい町と知られているそうで、これもまたレイトの提案で安くて盛りのいい食堂に向かう。

 そこでメルが、


「……お魚食べたい」

「魚もお肉もありますよ」

「本当!」


 といったレイトとの会話を見て僕は、ふと気づいた。

 というよりはもう少し早く気付くべきだったのかもだが、この二人はもしや恋人同士……。

 だがこれで違っていたらそれはそれで恥ずかしいので僕は黙っていることにした。


 代わりに僕はカイルに、


「料理楽しみだね。野菜が美味しいんだ」

「そういえばここは、“とろ草”の名産地だったな」

「“とろ草”」

「そうだ、緑色の俺の片手くらいの葉っぱだが、普段は開いているが、葉を刈られそうになると白い粘液を出して攻撃してくる野菜だ」

「やさ……い?」


 果たしてその生物は本当に野菜なのだろうかという気もした。

 さすが異世界、僕の想像を超えていると思いながらも、そこで気づいた。


「まさかその“とろ草”を使った料理のお店に行く、とか?」

「そうですよ。とても美味しい野菜ですからね」


 答えたのはレイトだった。

 メルも楽しみだ、美味しいしと言っている。

 どうやらこの世界では割と一般的であるらしいその野菜は鍋にすると美味しいらしい。


 そして僕も恐る恐るそのお店で食べてみると、臭みもなく豆乳のような味わいの鍋で、良かったと思ったのだった。








 美味しい食事に幸せな気持ちになって僕達は宿に戻った。

 そこで僕は久しぶりに猫耳カチューシャをとる。


「ふう、ずっとつけたままなのも何となく変な感じなんだよね……ふわあ」

「可愛い可愛い」


 猫耳カチューシャをはずした僕の頭を、カイルが撫ぜる。

 しかも洗脳すると宣言したように、“可愛い”と言い続けている。

 う、うにゃ……く、どうしてこんなにカイルは撫ぜるのが上手いのだろうかと僕は思わざる負えない。


 そうやって僕がとろんとしているとそこでメルが、


「やっぱり耳が無いと女の子に見えるね」

「……僕よりもよほど女の子に見えるメルには言われたくないのです」

「なんだとぅ、そもそも女の子に獣耳などが無いのは当たり前じゃないか! ある方が可愛く見えない!」

「そうなんだ。女の子の獣耳の良さが分からないとそう言いたいのか。ごそごそ」


 ここで予約版の獣耳少女の出てくる漫画を僕は取り出した。

 そして、おいでとメルを手招きしてそして、五分後。


「獣耳女の子最高です!」

「くくく、お前もこちら側に来てしまったようだな」

「く、タクミの言うとおりになるなんて悔しい、でも萌えちゃう、ビクンビクン。……というのは置いて、どのキャラが好きなのかな? タクミは」

「この銀色狼耳の子!」

「……」


 即答した僕にメルは僕の顔を見て、


「わざとか?」

「? 何が?」

「いや、なんでもない」

「気になる、言うんだ!」

「ちょ、尻尾を狙うなぁあああ、にぁあ!」


 といったようにメルの尻尾を追いかけていたら、“獣化”して猫になり、僕はメルに逃げられてしまった。

 しかもレイトの膝の上にのって、安全地帯を確保し、そのままレイトに撫ぜられて猫になったメルは気持ちよさそうに、にゃあと鳴いていた。

 そこではっとしたようにカイルが外を見る。


 しかもレイトもだ。何があったのだろうと僕が思ってるとカイルが、


「囲まれているな」


 そう呟いたのだった。


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