第14話(別猫ですにゃ)
荷馬車が止まったので、なんでだろうと思って外を見ると、二台の別の荷馬車が止まっていた。
どうも何らかの事情で、ぶつかったか何かをしたらしい。
すると荷馬車のおじさんが僕達の前に現れて、
「どうやら前の二台の荷馬車が事故を起こしたらしい。それで言い争っているみたいなんだが……ちょっと待っていてくれ。話を聞いてくる」
そう僕達に告げて去っていった。
荷馬車の事故ってどんなだろうと思った僕はそこで、未だにカイルに胸を触られていることに気付いた。
「カイル……」
「あ、すまない。つい……」
カイルがそっぽを向いて頬をかく。
だが、ついって何だ、と僕は思った。
むっとしてカイルを見上げているとカイルが僕をじっと見て、それから頭をなぜた。
こ、こんなもので誤魔化されたりしないんだからな! と思うのに僕はふにゃとなってしまう。
そこでさっさと荷馬車から降りて、何が起こっているんだろうと覗きに行ったメルが、荷馬車の端から様子を窺ってすぐさま猫に変化した。
日の光の下では茶色毛並みが明るい金色のようにも見えて、なかなかの美猫になっている。
どうしたんだろうと僕が思っていると、そこで代わりに今度はレイトが白鳥から白い煙を出して元の姿に戻り、荷馬車から降りる。
それからすぐにメルを抱き上げた。
「何をするにゃ! ……にゃ~」
レイトに顎を撫でられて心地よさそうにメルがごろごろと鳴いている。
レイトはメルの扱いに慣れている……そう僕が思っているとそこで、荷馬車のおじさんが戻ってきて、
「どうやら、ぶつかった拍子に荷物が一部、混ざってしまったらしい。こっちが自分のものだと、言い争っているようだ」
そう荷馬車のおじさんが僕達に言ったのだった。
言い争いをされたままだと僕達は次の町に行けない。
というわけでできる限りの手伝い出来ることはして、移動してもらおうという話に。
そして彼らのもとに向かう僕達。
いたのは、こげ茶色の狐耳の男と、緑色の三角形にとがっているものの端が長い紐条になっており、うろこのような柄がついた耳? のようなものが頭についている男だった。
獣人じゃないのか、と僕が思ってカイルに、
「あのとがった耳の人は獣人じゃないのかな?」
「そうだな。竜族だ。珍しいなこんな場所で」
「そうなんだ?」
「ああ、国はもっと遠かったはずだから、このあたりに何か必要なものがあったのかもしれない」
「へ~、そういえば、この世界って転移魔法はないのかな? 魔法があるならそういったものもありそうな気がしたけれど」
そう僕が問いかけると、カイルは少しの沈黙後、
「媒体なしでは、それぞれの種族の長である王族くらいの魔力が無いと無理だな。王族はそれぞれの種族で桁違いの魔力を持っているから、その魔法が使えるというのもあるが」
「媒体? というものがあれば転送もできるんだ」
「出来るにはできるが魔力も沢山いるし、才能のいる魔法だから値段が高すぎて一般的ではないな」
「そうなんだ……特殊な才能か。そっちの方が僕も嬉しかったな」
この“鑑定スキル”は今一どう使えばいいのかが僕にはよく分からない。
そこで先ほど争っていた狐耳の人が猫化したメルに気付いて、それにメルが小さく震えてから、
「にゃん」
「うちのお屋敷の弟の方の若様に似ているような気がしますね。この茶色の毛波が特にそっくりです」
「……別猫です」
「別猫……それにしては似ていますね」
「にゃん。それより、どうしてこんな事に? 僕達は隣の町に行きたいんですにゃ」
メルが、そう話を変えたのだった。
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