第10話(拾えてよかったと思うよ)
いつの間にか、メルが目を覚ましていたらしい。
まるで珍獣を見るがごとく、僕を観察している。
しかも興味津々といったように茶色い猫耳をぴくぴく動かしている。
「さ、触りたい」
「何が?」
「猫耳が。ピコピコ動いているのが、うずうずする」
相手は男だが一応は美人というか美少年なのでそのあたりは妥協して、その本物の生な猫耳を僕は一度でいいから触ってみたいと思った。
だがそう告げた瞬間、僕はメルにジト目で見られてしまう。
僕は何かまずい事でも言ってしまったのだろうかと思っているとカイルが、
「タクミ、猫は特に耳が敏感だから触るなら、俺の耳にしておくといい」
「あ、そうなんだ。ごめんメル」
僕がそう謝ると、メルは目を瞬かせてから次にカイルの様子を見て、ふむと頷く。
どうやら納得してくれた? らしい。
けれどすぐに小声でメルが、
「異世界人は獣耳が無いって本当? それに“獣化”出来ないって聞いたけれど」
「うん、そうだよ。あ、だから特殊能力があるのかな?」
「特殊能力? どんな?」
「鑑定スキル」
「……」
メルはそれを聞いた時、なーんだと興味を失ったような表情を隠しもしなかった。
で、でもこの能力、無機物だけじゃないし、そういった意味で珍しいというか……やっぱり地味だよね、この能力と僕は思った。
と、僕の頭をカイルが撫ぜて、
「大丈夫だ。使い道によっては凄い力を発揮するだろう」
「うう……頑張って考えてみます」
「そうするといい」
カイルが微笑み、カイルの狼の耳が嬉しそうに揺れる。
こっちの耳も可愛いなと思って、
「今、獣耳の方を触らせてもらってもいいかな?」
「……いいだろう」
というわけで手を伸ばして触らせてもらう事にした。
ふさふさのやわらかい毛。
空気を含んだそれは、触れるだけで心地が良い。
あまり痛くないように触らないとと僕が思っているとそこでカイルが、
「タクミ、くすぐったい」
「! ご、ごめん」
僕は慌てて手を放した。
そんな僕にそれまで黙って様子を見ていたらしいレイトが、
「随分気に入っていますねカイル」
「……悪いか」
「いえいえ、いい兆候だと思いますよ」
どうやら僕をカイルが気に入っているのは良い事であるらしい。
どういう意味なのだろうと僕が聞こうとした所で、料理が運ばれてきた。
明らかに二人分ではない量の食事が机に並べられているのを見ていると、そこでレイトが、
「昼食はまだだったのでしょう? ご一緒しませんか? もっともこのまま城の方に向かうのであれば私達もついていきますし」
「……つまり一緒に城に戻ると。それほどまでに俺は信用ならないといいたいのか」
嘆息するように言うカイルだが、今、カイルは城に戻るといっていなかったかと僕は気づいて、
「あれ、カイル、お城で働いているのかな?」
「……そうだな。でも全部嫌になって放り投げてきたが、そこでタクミと出会ったんだ」
「! そうだったんだ。でも僕、カイルに拾われてよかったと思う」
「……」
そう僕が言うとカイルは固まって、少し視線をさまよわせてから微笑み、
「俺も、拾えてよかったと思うよ」
そう答えてくれたのだった。
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