四国遍路 完結編
■四日目
7時半ごろ、泊まっていた香川県坂出市の瀬戸内荘を出発。
このホテルは少し古かったが、6000円で一泊2食付き。天然温泉で露天風呂とサウナもあり、しかも夜は鯛しゃぶというお得感であり、とても満足した。この旅初めてのビールも飲んだしね。
さて、昨日74番を飛ばしてしまった為、まあお参りする順番にこだわることもなかろうと近くの78番郷照寺からお参り。曇っていたが、境内から瀬戸大橋が見えた。あと、庭園もなかなか立派であった。
続いて77番、76番と逆に回り、74番のご朱印も無事済んで順調に消化。
が、79番天皇寺(高照院)への道に迷ってしまう。私は元々方向感覚がいい方ではなく、愛車にはナビもついていないので。周りも住宅街みたいになって、道も入り組んでいる為わかりずらい。1時間ほどロスしてようやく到着。
着いたころには11時を過ぎていた。
そして80番国分寺を終わり、また山道へ。88箇所って半分くらい山の中にお寺がある気がするが…歩いて回ったらほんと大変だなと思う。
81番白峰寺を過ぎて、途中高台にあるうどん屋さんに入った。今回初うどん。値段も安いし(肉うどんで400円くらいうまかった。アイスを食べながら82番根香寺へ。
84番屋島寺はその名前のとおり、屋島の古戦場跡のすぐ近くにある。ちょうど天気もよかったので「ここで源氏と平氏が戦ったのかぁ」や「那須与一がこの辺で弓を射ったのか」と思いをはせていた。
本堂も重要文化財で朱色のはげ具合がなかなか味のある建物であった。
85番八栗寺へはケーブルカーを使って登った。山岳地にあるお寺ですぐそばまで岩が迫っている。
やはり街中にあるお寺より、こういった自然と一体となったお寺の方が好きだ。
納経時間ギリギリだったが、今日は予定通り87番長尾寺まで順調に消化。長尾寺向かいの旅館あづまやに泊まる。
お客さんは私ともう一人だけで鹿児島から来たヒガシさんという中年の女性の方。NHKの連ドラ「どんと晴れ」でヒロインをいじめるベタラン女中さんに顔が似ていた。俳優さんの名前がわからないが…。
ヒガシさんは区切り打ちで回っているらしく、途中で電車やバスも使っているとのこと。
宿のおかみさんを交えて夕食を食べながらしばし話す。やはり年中いろんなお遍路さんが泊まりにくるらしい。
「兄ちゃんまだ若いんやから、正直に生きなあかんで。やっぱり大師さんは見てるでな」という言葉が印象的。
「お遍路さんはみんな大師さんの化身やと思っている」とのこと。
帰りのお金がなくなったり、財布を落としたりでお遍路さんにお金を貸したりしたこともあるらしい。
でも、中にはそのまま返さない不届き者もいるらしく、
「でも大師さんは見てくれてるんやろなぁ、そんな後に限って予約が一杯になって店が繁盛することが多い」
と笑いながら語っていた。(後日思わぬ伏線になっているとは知らず、私も感心しながら聞いていた)
明日の大窪寺までのコースの説明を受ける。2つのコースがあるらしく、1つは県道を通りずっと車道を歩く比較的なだらかだが距離のあるコース。もう1つは女体山を越える厳しい山越えコース。
「女体山越えは5月に娘が子供を連れて行ったけど、かなりしんどいって言ってたよ。健脚な人向けやね」
自分が健脚な人に該当するのかかなり不安になったが、やはり最後は山越えで感動を味わいたいのと、女体山越えという響きに惹かれた(女性で気を悪くされた方、ごめんなさい…)
宿に置いてあった漫画をパラパラと眺め、10時ころ早めに就寝。
■五日目
朝5時起床。5時半出発。
本日は歩いて88番大窪寺を目指す為、宿に車を置かせてもらい、金剛杖と菅笠という遍路コスプレで出発。白衣は着ると暑いので今回は着ないことにする。
久々の歩き遍路の為ペースをつかむようにゆっくりと歩く。
7時30分 出発地から5.2キロ地点。道の駅ながお&前山おへんろ交流サロンに到着。
おへんろ交流サロンは8時くらいから開いていて地元の人のお接待が受けられると、前日宿のおかみさんが言っていたが、特にそれが目的でもないことと、朝の涼しいうちに距離を伸ばしたいので、出発。前日同じ宿だったヒガシさんにも会った。
ヒガシさんはおへんろ交流サロンが開くまで休憩しとくという。ヒガシさんは6時くらいに宿を出たらしく、私がトロトロ歩いていたら途中で追いつかれたようだ。やはり、ずっと歩いている人はちがう。
すぐに分岐点があり、山道に入った。虫が嫌いなのにアブや蚊の羽音がずっとしているので少し鬱…。特に近くにスズメバチの巣でもあったのだろうか、ブォォンと威嚇するような大きい羽音がしたあと、スズメバチが数匹来襲してきた時はかなりビビった。早足で逃げた。
途中で道を間違えたらしく、本来予定していたルートとは別の、より険しい道を選択してしまったらしい。戻るのも癪なのでこのまま進む。日頃の運動不足があってか登り道は10分くらい歩くと、汗が大量に出て息苦しくなり、前に進めなくなる。
前方にもやっとした白い人影が見えた。あ~おれとうとう幻覚が見えたかな…と思っていると、
白い影が「あ~お四国さん、おはよう。お疲れさん」と言った。
なんてことはない、農作業中の地元のおばあちゃんだった。おばあちゃんと少し話して、また進む。
人に励まされると、ちょっと元気がわいてきた。あとはペースをさらに半分に落とすと楽になり、頻繁に休憩しなくてもいいということを発見し、しんどくなった時は声に出して真言を唱えるなどして乗り切った。
特に気にいっていたのが不動明王の真言で
「のうまくさんまんだ、ばざらだんせんだ、まかろしゃだ、そわたや、うんたらた、かんまん」
山道で一人で怪しい呪文を唱えるなんて、アブないやつ!とか思わないように! 剣道の先生もしんどい時にこそ、声をだせ! といっていたし、結構力が湧いてくるんだなぁ、これが。
途中岩場ですべり落ちそうになる場面もあったが、なんとか
10時ごろ 女体山 頂上着。
朝、宿でもらったおにぎりだけではハラペコになってきたので、カロリーメイトを食す。あとは下り道メインになるので、膝をブレイクしないように気を付けながら気分よく歩く。
車道と交差する所があり、軽トラに乗った地元のおっちゃんに話しかけられ、ペットボトルに入った麦茶と缶のキリンレモンをいただいた。今回初お接待。ブログをやっているらしく、後姿を撮らせてくれといわれたので、快諾。
特にキリンレモンが飲みたくなったので、一気に飲み干した。
そして11時、ついに88番大窪寺へ到着。
山道を歩いてやっとたどり着いた、という思いとこれでお遍路も終りか…という少しさみしい気持ち。
地元の小学生がたまたまこの日一日だけお接待体験をしており、ポケットティッシュカバーをいただいた。
しばし歓談して、記念に写真撮影。6年生は1人だけ、5年生が5人というとても小さな学校らしい。
無事納経をすませ、結願証明書(賞状のようなもので、金二千円也)をついでにもらった。
山門をおり、友人からの情報で八十八庵の打込みうどんを食べる。
いやぁ、疲れた体にしみわたったわ。うどんもコシが効いてて、味噌仕込みっていうのもナイスだよね。
田舎の素朴な感じがして、いい。
帰りのバスが来るまで、境内のベンチでぼーっと、今までの旅のことやら物思いにふけっていた。
またお遍路行きて~次は歩いて回りたい。なんて思いが強くなってきた。
■最後の大事件!!
さて、無事に昨日泊まった旅館あづまやに帰り着き、着替えをすませて、宿のおかみさんにお礼を言って、車に乗り込んだ。
「さーて、せっかくだしもう一軒うどんつまんでいくか」
とセルフのうどん屋に入ろうとすると……
さ、財布がない!!
どうやら、荷物を整理する時に車のボンネットに置いていて、そのまま走ってしまったのではという説が有力(我ながらアホとしか思えない)。
いったん、あづまやに戻り、訳を話して、おかみさんや当時小学生だったお孫さん二人も色々と探してくれたのだが、見つからず……
おかみさんが帰りのガソリン代と高速代二万円を貸してくれた。
見事に昨日の話がフラグになっている!
もちろん、帰ってからすぐに現金書留でキチンと返しました。
そして八十九番の札所(爆)香川県長尾警察署へ。
財布の遺失届を納めましたとさ……
ちょうど電子マネーが流行しはじめた時で私は二万円くらいチャージしていた。
それも、全部パー。他にカードの再発行手数料やら免許証の再発行やらでかなりお金が飛んでったなあ。
落ち込む私を見かねた支店長や先輩達が、しばらく日替わりで夕食に連れて行ってくれたのも今となってはいい思い出だ。
こうして私の足掛け五年、合計五回四国へ渡ったお遍路は、無事??に結願となった。
元々遍路体験をまとめようと思ったのは、去年(2017年)に香川の善通寺に行ってきて、遍路のことを思い出したのがきっかけである。
そして嬉しい事にこれを読んでくれた作家仲間のお友達から、「ジョギングと、ゆくゆくはお遍路してみたい」、というお声をいただいて。
なんか人の縁とかそういうものっていうのは、我々凡夫のあずかり知らぬところでしかるべきタイミングで繋がっているのかな、なんて思った。
区切り打ちなら、ちょっとした休みを工夫すれば回ることができるし。
興味があったら、とりあえず行ってみてつまんなかったら帰ってきてもいいと思う。
マイカーで気軽に回ることもできるしね。
私なんか営業職だからさ、顔とか名前を覚えてもらってナンボなわけよ。
経験は何でも芸の肥やし。ネタや話の引き出しは多いほうがいいのよ。
「寺とか神社とか、教会とか好きなんです!」 って自己紹介で言って。
そのあと「実はお遍路さん行ったことあります」って言うとたいがい「おっー! 本当か(こいつガチやな)」みたいなちょっと一目置かれる反応になる。
そしてやっぱり弘法大師空海は好きだな。
日本仏教界が生んだスーバースターだよね。
興味のある人はぜひ一度四国へ足を運んでみてください。
四国の雄大な自然と、あたたかいおもてなし、そして大師さんがアナタを優しく見守ってくれるはずです。
遍路編は今回で終了ですが、引き続き私の趣味については不定期で更新していければと思います。よろしく、お付き合い願います。




