四国遍路その2
■二回目の四国へ
(二十八番大日寺→三十六番青龍寺)
無事に弱小銀行に就職を決めた私は、バイトに励んでいた。
一つはヨーロッパへバックパッカーするためと、もう一つは四国へ行くため。
九月、バイト先にイヤミを言われながらも休みを取った私は、高知市行きの夜行バスへ飛び乗った。
実はこの旅には同行者がいた。当時付き合っていた同じサークルの私の彼女(笑)
まあ、観光旅行も兼ねてって感じで。
実は遍路には十善戒と言って、修行中に守るべき十の戒律がある。
そのひとつに「不邪淫戒……みだらなことはしてはいけない」ってのがあるのだが……まあ若い男女が同じ部屋に泊まっていたらすることは一つしかないよね。
高知市から土佐くろしお鉄道を乗り継いで、最寄りの駅から徒歩で二十八番大日寺へ向かった。
天気は快晴、田んぼ道を金剛杖をつきながら彼女と二人テクテクと歩く。
電車と歩きを交えながら、この日は三十番善楽寺まで行き、高知市内のビジネスホテルへ泊まった。
翌日は三十一番竹林寺までバスで行き、そこで学業のため京都へ帰る彼女と別れた。そこからは約二十キロの道のりを歩く。そういえば道中、お接待でおばちゃんからリンゴをもらったな。
途中、渡し船に乗るつもりが道を間違えて、浦戸大橋を渡るルートを選択していまい、強風で体が飛ばされそうになる恐怖を味わったのを今でも覚えている。
三十三番雪蹊寺の近くの民宿に宿を取り、その日は就寝。
次の日、朝五時に宿を出てまだ暗い中をひたすら歩いた。
この日は、フルマラソンを完走するまでは私の中で最高記録だった一日四十キロを歩いた。
一日四十キロ、想像できます?
休憩を挟みながら一時間に約四キロ、それを十時間続けるわけだ。
しかも平坦なアスファルトの道だけじゃない。山道や下り坂もある。
自分でも何のために歩いているのかよくわからなくなる時がある。
徳島県、阿波国は「発心の道場」
そして高知県、土佐国は「修行の道場」と言われる。
土佐の巡礼道は札所間の距離が長く、険しい海岸線や山道をひたすら歩く。
雨の日なんかはマジで心が折れそうになる。
それでもなんとか、自分を叱咤しながら歩く。
でも他の人に聞いてみても、やはり土佐が一番印象に残っているという人が多い。
私も実際そうだ。
お遍路さんってドMな人が多いんですかね。
<三十五番清瀧寺にて 最後の登り坂がきつかった>
三十六番青龍寺の近く、国民宿舎土佐にて宿泊。
余談だが、ここの露天風呂から見える夜景が私の中では日本で一番の絶景だと思っている。
遠く、四国の端室戸岬まで見渡せる土佐の街灯り。
海に浮かぶ、船の漁火。
その奥にかすかに見える、空と海の間。
思わず、フル◯ンで仁王立ちしたね。
翌日、予定通りバスに乗って高知市まで戻り、そこから高速バスで帰路に着いた。
大学最後の春休みは一ヶ月半くらいある。
予算的に全部を歩いて回るのは難しいかもしれないが、ここでお遍路を完遂しよう。
その時は、そう思っていたのだが……
■足の骨折と三度目の四国
(三十七番岩本寺→四十番観自在寺)
大学生活最後の春休み。
二月、私は当時付き合っていた彼女と長野へスノボ旅行に出掛け、そこでなんと右足首を骨折した。
うーん、不邪淫戒をやぶったせいだろうか(苦笑)
おかげで一ヶ月間松葉杖生活。
ゼミの仲間と行く予定だった西日本一周旅行も見事にキャンセルとなった。
一ヶ月間はふてくされていて、出掛ける事もままならないのでなぜかひたすらドイツ語を勉強していた。(ちなみにドイツ語は現在全く話せない)
松葉杖が取れても激しい運動はできないので、山中を一日平均三十キロは歩くお遍路はもちろん断念……
するはずだったんだけど、どうしても四国の空気が吸いたくなり、調べてみるとバスと足に負担が掛からない程度に高知県須崎市を通り、愛媛の宇和島市まで抜けるルートがあるようだ。
という訳で私は須崎行きの夜行バスへ乗り、三度目の四国へ。
三十七番岩本寺はJR土讃線の窪川駅から徒歩十分ほどで着く。
そこからはバスを乗り継ぎ、清流四万十川を抜けて、四国最南端の足摺岬へ。
<修行の道場 土佐 海岸線をゆく>
足摺岬近くの三十八番金剛福寺へ参拝。
その日はあしずりユースホステルに宿泊。
部屋は相部屋で、六十歳くらいのおじいちゃんだった。
退職後に車で遍路旅をしているらしい。
おじいちゃんとビールをつぎながら新設されたばかりのプロ野球の楽◯ゴールデン◯ーグルスのクソ弱さについて語り合った記憶がある。(今でこそ優勝候補の常連だが当時はむっちゃ弱かった)
あと「タイのフー◯クは安いし、女の子も可愛いし最高」みたいなゲスな話もしてくれたな。
(数年後に私もタイにいったけど)
「せっかくだから車で乗せってってあげるよ」
と言われたので次の日、お言葉に甘えることにし、四十番観自在寺まで乗せてもらった。
「宇和島まで乗っていけば?」
と誘ってくれたが、コミュ力ありそうにみえて実はあんまり他人に心を開いてなくて結構人見知りしちゃう私は、「バスを予約しているので」とか適当なことを言って断った。
宇和島市までバスに乗り、ちゃっかり現存十二天守の一つである宇和島城を観光してその日は宇和島で宿泊。翌日、高速バスで帰路に着いた。
こうして私の二泊三日の三度目の四国旅は、終わったのだった。
やばい、長くなってしまった。
さらに続きますm(_ _)m




