表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

出会いと別れと関係と

作者: 音叉

「あなたには私の気持ちは分からないわ」

こんなことを言われたのはここまでの人生を通じて何度目だろう。

言われてようやく分かった。人の気持ちというものを一言で語るのは不可能だということを。

どうしてこうなってしまったんだ?という後悔と自責の念が一斉に押し掛けてくる。

常に柔らかく生きよ、といったのは最も尊敬する恩師だった。

ふわふわ言葉とちくちく言葉。こんな子供向けの言葉を使うまでもない。心をセトモノにしてはいけないと何度誓っただろうか。

どうやら、私はまた失敗したようだ。

「もうあなたとはいたくない」

目の前の妻が淡々と言う。

ついに妻にも見捨てられてしまったと考えると、自分がとことんダメだと思い知らされる

妻は続ける。

「子供もいないことだし。別れたいの。もうあなたとは一緒に暮らせない」

スッと、離婚届を出される。サインして、と妻がいった。

「ああ。分かったよ。俺も覚悟を決めよう」

ペンを手に取る。さて、名前を書くか、と思ったその時。

妻は死んでいた。

やっぱりこうなってしまった。

私に関わった、私と別れた人間はいつもこうなる。

今回は窒息のようだ。鬱血していないのを見ると実に安らかに死んだようである。

さて、感傷に浸るのはこれで終わりにして、作業を始めよう。

すでに死神は隣にいるのだ。

妻のふわふわは簡単に分離した。あとはこれを隣の死神にわたすだけだ。

生きているふわふわは死神の最高の栄養源なんだと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ