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先生が退屈な人でよかった  作者: じんたね
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2・4 不穏な職員会議

 翌日。

 いつもの早朝の職員会議。ほぼ流れ作業の報告事項の確認が続く。多崎校長が、退屈そうに目をこすりながら耳を傾けている。そろそろ終わりだ。そう思ったとき、


「ご連絡があります」


 3年1組の担任である香川時夫先生が発言をした。


「ご案内しておりましたように、本日18時より慰労会を予定しております。場所はいつもの多幸衛ですので、よろしくお願いします」


 発言が終わると同時に、職員室の先生方が一斉にデスクワークに戻る。


「花本先生、すみません」


 私はデスクではなく、花本先生に視線を移す。


「少々、うかがいたいことがあるのですが、女子の間にですね、その、トラブルと言いますか、不穏な動きはありますか?」


 私は月島について情報を得たかった。もしあの噂話が容姿に対する嫉妬であれば、犯人は女子であろうし、それは花本先生のような女性が精通している可能性がある。


「どうでしょうか」


 花本先生は、不思議そうに首を傾げる。「何か気がかりなことでも?」と聞いてくる。


「その、最近、女子が浮足立っているような気がして、根拠があるわけではないのですが」

「そうですね」


 彼女は傾いた首に手を添えながら、視線を天井に向けた。


「女子の間には必然的かつ不可避的な人間関係の泥沼が常態化していますけれど……、私の受け持っている1組は、たしかに浮足立っていますね」

「え、本当ですか?」

「ええ」


 嫣然と微笑む花本先生。それにしても、必然的かつ不可避的な人間関係の泥沼の意味を聞いてみたい気もするが、今はその話題ではない。


「国立先生はおもてになりますから。先生の授業前は落ち着きがありません。詳細はお教えできませんけれど」

「あ、はあ」

「多崎校長が心配されるのも分かる気がします」


 不穏な台詞を残して、花本先生は「そろそろ早朝HRがありますので」と職員室を出ていった。


 私のことはさておいて。

 花本先生の言ってたように1組に何もないとすると、噂話は2組の連中が始めたのかもしれない。まだまだ情報不足だと思いながら、私も席を立ち、HRのために教室へと向かう。


「いいぞ?」


 扉に手をかけたところで、多崎校長がぼそりとつぶやいた。

 私は、鼻筋に皺を寄せて睨み返してから、職員室をあとにした。



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