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10・6 示唆
「おーい、そろそろ国語の時間だぞ」
校舎2階の中央階段をあがってくる多崎泰一が、佐々岡信二と門田杏に声をかける。「油売ってないで教室に入れ」と2人の肩に腕を回す。
「……で、あいつらは屋上に行ったんだな……?」
そして小さな声で耳打ちをした。
「……」「……」
2人は互いに顔を見合わせたあと、多崎の顔を見ながら黙って頷く。
「……さて、これからどうしたもんかな……あとは2人の問題という気もするが、2人だけで解決できるのなら、こんなにこじらせることもなかったし……」
佐々岡・門田の肩を抱いたまま、ゆっくりと2組の教室へと歩き始めようとする。
「あ、あんね、泰一」
だが門田はその場に踏みとどまった。「うちも話がしたい」と体の向きを変える。そのまま彼女は階段を駆けあがっていってしまった。しばらくその様子を眺める男2人。
「止めないんすか?」
ようやく佐々岡のほうから口を開いた。
「止めてどうする? あいつらの邪魔をするなってか? それとも俺の授業に出ろとかか?」
「……でも」
すると多崎は、佐々岡に引っかけていた腕を離して、勝手に2組の教室へと歩き出した。
「あ、泰一先生――」
「俺は授業をする。あとは自分で考えろ」
「……」
教室と階段を交互に何度も見たあと、佐々岡は階段へと駆けていった。




