表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先生が退屈な人でよかった  作者: じんたね
56/70

9・10 充実した登校からメランコリックな下校へ

 ――どうしよう。


 ベッドの上で体育座りをしたまま何もできない。

 もう無理なんだ。前みたいに一緒にはいられない。


 先生は本気だった。佐々岡も門田さんも先生の味方になっている。泰一だって先生のことを気にかけている。お母さんも先生のことが好きだ。


 どうしよう、どうしよう。もうどうやっても私だけが悪者になる。


 ずっと信じたくなかった。先生が私を恨んでいるなんて。仕返しをしようと考えているって。先生の苦しみを分かっているのは私だけだから大丈夫。きっと私のことを大事に考えてくれる。弁護士さんに会ったときも、先生の家で話をしたときも、どこかでまだ大丈夫って思おうとしていた。


 だけどもう否定できない。お母さんまで味方につけるほど本気だったから。

 

 ――月島の顔は退屈そうにしているからな――

 私が先生に話しかけたときも、同じことを言った気がする。これは宣戦布告だったんだ。


 ――月島を助けたいと思っているんだ。月島がそうしてくれたように――

 私を退屈させないって言ってる。退屈できないほどの刺激を用意するって。


 ――月島からもらったものを、月島にちゃんと返したい――

 私のことを恨んでいるんだから、仕返しをしたいって気持ちに正直になるんだよね。


 私はたまらずポケットから携帯と取り出した。


『月島です。大丈夫ですか?』

 先生と交わした、最初の頃のメッセージを表示させる。


『大丈夫だ。どうして私の連絡先を知っているんだ?』

『ごめんなさい』

『どうして謝るんだ?』

『国立先生の携帯を勝手に見ました。あの雨の日です』

『見てしまったものは仕方ないが、今後は控えてくれ。親しきなかにも礼儀あり。夫婦でもプライベートには干渉しないものだ』

『ごめんなさい』

『分かったのなら十分だ』

『遠征は、花本先生が一緒だったんですか?』

『そうだ』

『月島は普段から、こんな風にメールするのか? 文体が丁寧というか、シンプルというか』

『先生は友だちみたいなのが好きですか? 国立先生だから気を遣ってみました』


 もう戻れない。

 あの頃のように先生と話すことはできない。期待していても辛いだけ。頑張っても駄目なものは駄目だって、もう知っているはずなのに。だから未練を捨てないと。先生への気持ちを諦めなきゃ……。


 私はメッセージを削除しようと、親指を画面に押し当てスライドさせる。表示される『削除』の文字。震えながらそれに触れると『削除してもよろしいですか?』と再度表示された。

 触れようとしても親指が動かない。駄目。これは消さなきゃいけないの。


「なんで……」

 ぽたりぽたり、と画面に涙が落ちてきた。お願いだから消させて。これを見たら辛くなる。また期待しちゃう。お願い、あと少しなの。


「どうして、どうして消せないの……」


 それでも親指は動いてくれなかった。

 私はずっとにじむ画面を睨みつけることしかできなかった。そして気を失うように眠りについたのは、携帯の充電が切れた直後だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ