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先生が退屈な人でよかった  作者: じんたね
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1・3 お仕事÷薬物

「お大事に」


 睡眠薬を処方された私は、受付のお姉さんに見送られつつ薬局を出た。

 気まずい放課後を経験したその足で、かかりつけの大森心療内科を訪れていた。暖色系の塗装と、丸みを帯びた建物のデザインが特徴だ。学校からは車で30分ほどの距離にあり、夜遅くまでやっている。


(そんな生活してたらいつか死ぬぞ)


 診察風景が頭をよぎった。仕事のし過ぎてかえって眠れなくなり、睡眠薬に頼るようになる。寝て回復すればするほど、さらに仕事に打ち込む。私はその繰り返しらしい。


(人間っていうのは、仕事をしたくないし病気になりたくないし死にたくない。だから仕事をして病気になって死ぬ奴は頭がおかしい。つまりだな、先生はおかしさの真っ直中にいる)


 今日も、仕事の話をしていると説教された。

 建物の外観とは違い、ここの医者である子守心愛先生は口が悪く、歓迎ムードとはほど遠い。可愛らしい名前がまるで詐欺みたいだ。栄養と睡眠をとりましょう、有休をとってのんびりしてはどうですか、とか言ってもいいだろうに。夜の営業に踏み切らなければならない経営上の理由が分かる気がする。


 ちなみに心療内科の『大森』という名前は受付の人のものらしい。おおもり・こもりと並べて覚えろと教えられた。


(劣悪な環境下で労働を強いられていたり、ワーカーホリック気味の性格ならまだ分かるんだが、先生の場合、何か別の理由がある気がするな)


 カルテ片手に椅子にもたれかかり、一向に改善されない不眠について、そんな感想をこぼす。


(私を見たら分かるだろう? 人間は働かないほうが正常なんだよ)


 そしていつもの台詞で、今日の診察は終わった。


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